Nikon Imaging
Japan
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<ニコンサロン>
Ryan Andrew Bruss
Silence, The Self,& Architecture

会期

2023年2月14日(火)~2023年2月27日(月) 日曜休館

10:30~18:30(最終日は15:00まで)

開催内容

“The most essential auditory experience created by architecture is tranquility. Architecture presents the drama of construction silenced into matter, space and light. Ultimately, architecture is the art of petrified silence.”

「建築によって作り出される最も本質的で聴覚的体験は静寂である。建築は建設のドラマを物質、空間、そして光に切り分けて表現する。究極的に建築は感覚を静めさせる芸術なのだ。」

-The Eyes of the Skin: Architecture and the Senses, Juhani Pallasmaa


通常、私は写真撮影に関しては細部に渡りこだわりがある。絶対的な確信を持って一つのビジョンで対象と向き合えるよう、光を調整し、色々な手法を試す。この建築プロジェクトに対する石上純也氏の思いや概念的な構成については分からないが、写真家として、この広場は光を独特に操作し、自己という概念に対する感覚を拡大している。この空間の写真撮影に際しては、全く確信も、一つのビジョンも見出すことがなかった。人間の目は、光の違いを取り入れられる能力があり、そのためにカメラがなくても、構造物に連携しての光の動きをそれほど明らかなものではないけれども取り入れられる。しかし、この空間と光を探す手段としてカメラを通して見ると、建築構造の裏側にある発散的思考が明らかになる。

暗闇

この空間に対する私の最初の感情は、暗闇、内省の一種だった。この感情は、オンラインでは光と白に見える映像とは全く反対だ。外側と空にむき出しになっている空間に焦点を絞ることで、その空間が暗闇へと落ちていく。私が創り出したイメージは、光の断片が暗闇へと連なっているもの。上空の嵐は、題材となった、自己の概念、内なる戦いに立ち向かう自己の孤独といったイメージだ。この空間における対話者は、自分一人だけで、安堵または恐怖のいずれかをもたらす暗闇に囲まれている。この意味で、この空間は静まり返った一人だけの瞑想や内省の場所となっている。



カメラの焦点を内側に移動させ、空間の内側を映し出すと、突然、広場に光が満ち溢れ、概念的には焦点が外側へと移行する。空間は流動的で、白く、そして長い露出で、空間の中の動きが流れている。自己の概念は孤独感がかなり消え、空間の一部に溶け込んだような感覚だ。その意味で、空間を通して対話者がダンスに誘われているようで、孤独な存在としての自己ではなく、空間の流れと共にあるような感覚を持てる。何本もの差し込む光が内側の明るさと溶け合い、空間と自己が純粋な白い静寂の中に浮いている。

沈黙と建築

広場で1日を過ごすと、この空間の印象が自己と二面性についての解釈なのだと気づく。内なる模索と外側の広がりという自己に対する見方を与えてくれるのが静寂の空間だ。すべての人間は、内なる自己と外に向いた自己、暗闇と光でできていて、この広場の建築物と光はこのありふれた概念の美しい隠喩であると分かる。この広場が音で満ち溢れることがあるのかどうか分からないが、建築家はこの構造物を静寂のためにデザインしたと願うしかない。この静寂の状態であれば、この広場は内側と外側の両方で瞑想ができる強力な空間になる。光と暗闇の間を上下する、流動的な空間であり、自己を探る瞑想のための強力で刺激的な空間だ。

(Ryan Andrew Bruss)

プロフィール

Ryan Andrew Bruss

1979年6月7日、アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド生まれ。

2001年に、オレゴン州セーラム、ウィラメット大学日本研究専攻、修辞学とコミュニケーション研究副専攻を優等賞で卒業。その後、日本に転居し、東京国際大学でデザイナー兼トランスレーターとして2006年まで勤務。2006年に、”Metaphors We Live By” の共著者であるMark Johnson 教授と研究を共にするためにオレゴン大学でコミュニケーション研究&認知言語学の修士号課程を履修開始。

オレゴン大学では、 Daniel Morrison教授のフォトジャーナリズム課程の助手をし、アドバイザーであるJulianne Newton氏と共に、修士論文 "Amae and the Gendered Identity of Cute: Framing Young Women as Sweet in the Japanese Mass Media." (「甘えとカワイイの性的アイデンティティ:日本のマスメディアが若い女性をスイートという枠組みに落とし込んでいる」)を書き上げる。また、2007年に、1年間明治大学で、Mark Johnson氏およびGeorge Lakoff氏を先駆者とする日本語と日本文化にメタファーを当てはめる革新的な研究に没頭。

2008年に、オレゴン大学コミュニケーション研究&認知言語学の修士号課程を優等賞で卒業し、東京に転居。東京では、明星大学でクリエイティブ&アカデミックライティングおよび言語学担当教授、そして2010年から明治学院大学で同コース担当教授をし、現在に至る。2008年に、東京へ転居以来、商業およびアートフォトグラファーとしても活動。クライアントは、ラルフ・ローレン、メルセデスベンツ、日産、ソニーやボーグなど。

2021年に、イタリアのアート雑誌 ”Graphie” の定期寄稿者になり、日本のアート、建築、文化に関する記事や写真撮影に日本のメタファーについての彼自身の研究を応用。続いて、2021年にIl Vicoloのギャラリーで "Shadows of Japanese Moss Gardens: Uchi Soto Cognitive Resonance"(「日本の苔庭の影:ウチとソトの認知的共鳴音」)および建築家のAndrea Pompili氏と創作したプロジェクト“Tuorloblue: Italian & Japanese culinary resonance”(「トゥロブルー:イタリア料理と日本料理の共鳴」)を展示。

ブラス氏の次回の展示会 “Silence, The Self, & Architecture”(「静寂、自己と建築」)は、建築家の石上純也氏の建築を通しての自己というコンセプトを写真で探るというもので、2023年にニコンサロン(ニコンプラザ東京内)で展示予定。2024年には、京都の哲学の道近くの高名な法然院で苔庭を更に深く写真を通して探索する展示会を開催予定。

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