22回目の開催となった総合写真祭「フォトシティさがみはら2022」のプロの部受賞者3人の作品を集めた写真展が、新宿駅西口の新宿エルタワー28階・ニコンプラザ東京THE GALLERYで開催されます。
会場では、豊かな精神文化の育成に貢献することを基本理念に掲げた総合写真祭において、新たな時代の担い手として顕彰されたプロ写真家の作品が展示されます。ぜひ、多くの方々に写真の持っている表現力や記録性などのすばらしさを感じとっていただきたいと思います。
(主催:相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会)
◆受賞作品について
2022年(令和4年)に開催された写真祭プロの部には、広義の記録性の分野で活躍している中堅写真家の中から「さがみはら写真賞」として1名、新人写真家の中から「さがみはら写真新人奨励賞」として2名が選出されましたが、「さがみはら写真賞」については受賞者が都合により賞を辞退されましたため、該当者なしといたします。また、アジア地域で活躍している写真家を対象にした「さがみはら写真アジア賞」として1名が選出されました。
<受賞作品のご紹介>
○ 「さがみはら写真賞」
受賞者が都合により賞を辞退されましたため、該当者なしといたします。
○ 「さがみはら写真アジア賞」
張 詠捷(台湾)
作品名『泰雅族紋面長老(紋面のあるタイヤル族の長老シリーズ)』より ※作品3点の内、左から1番目
○ 「さがみはら写真新人奨励賞」
岸 幸太(千葉県)
作品名『傷、見た目』より ※作品3点の内、左から2番目
○ 「さがみはら写真新人奨励賞」
中井 菜央(東京都)
作品名『雪の刻』より ※作品3点の内、左から3番目
◆審査員コメント
22回目を迎えたフォトシティさがみはらの「さがみはら写真アジア賞」は台湾を代表する女性写真家である張詠捷の「泰雅族紋面長老(紋面のあるタイヤル族の長老シリーズ)」が選ばれた。この写真は台湾の先住民族(台湾では「台湾原住民」と命名される)を長期に渡り撮影したものである。現在ではほとんど見かけることはない「紋面(ウェンミェン)」と呼ばれる顔の刺青を持つタイヤル族の長老たちの肖像写真だ。紋面は日本植民地時代に台湾総督が禁止し、彫師の道具を全て没収したため、その伝統は途絶えた。しかし紋面は民族の誇りと気高さの印であり、女性であれば機織りなどの技能を身につけ結婚する資格があることを意味していた。また各人の出自を表し、死後、紋面があれば虹の橋を越えて祖先と再会できると信じられた。祖先から代々受け継がれた伝統や風習を守り、人生を振り返りながら穏やかに先祖の時間へ浸ろうとする人々の瞬間を写真家は尊厳と沈黙を湛え写し出している。
「さがみはら写真新人奨励賞」は中井菜央『雪の刻』と岸幸太『傷、見た目』が選出された。『雪の刻』は、雪の写真を撮るため豪雪地帯の新潟県津南町などに2015年より毎冬100日間滞在撮影してきた作家が、雪の個性に着目しながら雪の生みだす光景と雪に生きる人々を自然宇宙の繊細な物語として捉えた労作である。『傷、見た目』も2005年から15年間に渡り、大阪釜ヶ崎、東京山谷、横浜寿町を撮影した長期に及ぶ記録であり、21世紀に入って激変する、労働者が集まる「寄せ地」の現実と歴史が緊張感と高揚と共に厚みのある映像として定着されている。
(東京藝術大学名誉教授/美術史家/美術評論家 伊藤 俊治)
写真は、芸術写真から家族写真まで広い地盤を持ち、その卓越した記録性と豊かな表現機能により、多くの人に感動を与えるものであるとともに、私たちの生活にとても身近な存在です。
相模原市では、豊かな精神文化が求められる新しい世紀の幕開けにあたり、写真文化にスポットをあて、これを「新たなさがみはら文化」として全国、世界に発信することを目指して、総合写真祭「フォトシティさがみはら」を2001年にスタートさせました。
この写真祭は、新たな時代を担うプロ写真家の顕彰と、写真に親しむアマチュアに作品の発表の場を設けるとともに、市民が優れた芸術文化に触れたり、それぞれの場に参加できたりする市民参加型の事業で、写真をキーワードとして、時代と社会を考え語り合うことで、新世紀における精神文化の育成に貢献することを基本理念にしています。
また、2006年日本写真協会より「日本写真協会賞・文化振興賞」、2011年日本写真家協会より「日本写真家協会賞」に、写真文化の振興、発展に貢献したとして、相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会が選定されました。