2018年から約4年間、東京の住宅街で樹木を撮影しました。
今なお都市開発が盛んな東京は、過去の面影を残すことなく風景が様変わりする傾向にあり、機能性を高め画一的な風景が広がっていく一方、特定のエリアには樹齢数十、数百年と思われる古い樹木が存在しています。
山の木々とは違い、都内の樹木は庭の限られたスペースに植えられることが多く、その隙間に合わせて巧妙に幹や枝をしならせ、周りの建築物はその成長を阻害しないような配慮も見られます。
いつも見栄え良く手入れが行き届いたものもあれば、電線や道の障害物としてばっさり切り落されることもあり、その時その状況により幾つもの様相がありました。
樹木の存在は、その家の住人や街との関係性や、時代を反映する表象のようでもあり、人間の都合で構築した環境の中で、最大限生きてきた樹木の時間を思わせるものでした。
一方、撮影を始めてから数年の間においても、伐採されてしまったり、家ととも撤去されるなど、時間の経過とともにいくつもの樹木がなくなりました。
このように街とともに生きてきた樹木はますます減っていますが、今後はまた違う形態で自然との関わり合いが現れてくるのかもしれません。
これは、今存在する樹木たちの姿を写すことにより、東京を記録するものです。
(久野梨沙)
1987年 愛知県生まれ
[個展]
2015年 「around here」(PLACE M)
2016年 「SURFACE」(新宿ニコンサロン)
2017年 「SURFACE」(大阪ニコンサロン)
2022年 「東京樹憶」(PLACE M)
[収蔵]
2021年、2022年 清里フォトアートミュージアム
[受賞]
2016年 第5回キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト