廃墟・遺跡を意味する英語であるruinは、runという動詞を語根に持つ。だから社会通念に反して、廃墟・遺跡において時間は走っている、疾走している。つまり廃墟・遺跡は本来つねに動いているのである。よってru(i)nsは、審美的な時間の静止状態ではなく、過去・現在・未来が交錯するアナクロニック(時間錯誤的)な、世界認識のための場所となる。
東京を、廃墟・遺跡と見立てる。東京をru(i)nsとして眺め、ここに写真家が介入し写真を撮ることで、東京を動かしていく。東日本大震災を経て、オリンピックではなくパンデミックを迎え、その渦中でオリンピックを断行した都市トーキョー。この都市化の果ての都市の本質を、都市の自然を、アナクロニズムの眼差しの下、動かしていく。東京における、人工性と自然の力関係、その均衡点を探り、これを動かしていく試み。2019年6月から開始され、今も継続中の、東京の風景写真を報告する。
(山岸 剛)
写真家。
1976年 神奈川県生まれ。川崎市在住。
早稲田大学政治経済学部経済学科および早稲田大学芸術学校空間映像科卒業。
人間が、人間の意識が意図をもって、計画してつくったもの(人工性)と、そうではないもの(自然)との力関係を観察し、写真に定着し、その均衡点を考察する。
個展に「Tohoku - Lost,Left,Found」(2014、コニカミノルタギャラリー)。写真集に「Tohoku Lost,Left,Found」(LIXIL出版、2019)、「東京パンデミック カメラがとらえた都市盛衰」(写真と文章、早稲田大学出版部、2021)。