親の家の片付けというものは、後に続く者の宿命のようなものである。
私の場合は、夫の実家を片付けることであった。
本格的に取り掛かる前、一人でそうっとタンスの引き出しの一つを開けてみた。積んであった洋服の箱の一つを開けてみた。立ちのぼる往時の空気・・・
ちょうどこの頃写真を撮ろうと思い始めた頃だったので、片付ける前にこれらのものを撮ってみようと思った。この時点で2年ほど前に亡くなった義母の洋服のようでもあったし、片付ける前に写真に撮っておけば記念にもなるだろうとほんの軽い気持ちで始めたのだった。ところが始めてみるとどうも思ったようにいかない。この頃はフィルムカメラにデジタルカメラが取って代わるちょうど境目のような時で、私は夫から譲り受けたフィルムカメラで撮っていた。街の写真屋さんで焼いてもらった写真を見ても、もっとこういう風にしたいなと思うことしきりであった。時間や場所によって光、空気感、明るさ、色まで違って見える。物の魅力はその時々姿を変え、ますます私をのめりこませていくのだった。2013年くらいからデジタルカメラに持ち替え、さらに撮っていった。
今回の作品は、2013年から2018年くらいの間、片付けも交えながら撮り続けたものである。その後仕上げをし、今回の写真展となった。
夫の母、祖母、曽祖母と誰の持ち物か分からないものもいろいろあったがいつの時代にも女性の心を捉えるモノたちにたくさん出合った。それらのモノたちの愛らしさ美しさは現在を生きる私たちにも同じ優しさで語りかけてくる。そういった魅力が少しでも写真に写り込み、見ていただいた方々に伝われば嬉しい。
(梅戸洋子)
1954年 滋賀県生まれ
1976年 滋賀大学教育学部彫塑研究室卒業
塑像彫刻、油彩、銅版画などの制作を経て、十数年前より、懐かしいものや街角の風景に惹かれ写真を撮り始め、現在に至る。
2008年~現在 写真家の杉浦正和先生に写真を習う。
2008年 3月 京都針穴写真倶楽部写真展 出展(ギャラリー西利)
2009年 4月 FRAME展 出展(ABOXギャラリー)
2012年 11月 関西針穴写真フェスタ 出展(心斎橋ピルゼンギャラリー)等グループ展多数参加
2009年 7月 梅戸洋子写真展(アートスペース東山) その後2016年まで毎年行う
2013年 11月 京都写真ビエンナーレ2013推薦出品(京都文化博物館)
2018年 6月 東京写真月間「写真の日」記念写真展特選