自分の正気を保たせてくれるものは何か。人から見ればちっぽけだったり、ズレているようでも、多分真面目に探しているのだ。
10代の頃に撮影していたエクレアを頬張る甘ったれで滑稽なセルフ・ポートレート。
20代になり、食べ物や人形をモチーフとしたグロテスクな美しさのなかに、混沌とするセクシャリティを探した。
憂鬱を抱えた30代半ば、母や人形の曖昧な輪郭を手で探るように撮影をした。
人生の折り返し地点を過ぎた現在、社会の波にどれほど揉まれても、愚直に好きなものや自分らしさを大事にしている友人たちの姿に共感を覚え、撮りはじめた。
写真テーマの変遷は、何とか正気を保ってこられた私の人生の軌跡のようであり、小さなお土産物に似た愛おしさも湧く。
(高橋万里子)
1970年 神奈川県生まれ。
1994年、東京造形大学卒業。2002年よりphotographers’ galleryに参加。
個展、グループ展多数。主なグループ展に「VOCA展2006」(上野の森美術館・東京)、「現代写真の母型2008『写真ゲーム』」(川崎市市民ミュージアム・神奈川)、「MOTアニュアル2008『解きほぐすとき』」(東京都現代美術館・東京) 、「Daegu Photo Biennale 2008」(EXCO・テグ/韓国)などがある。
2022年7月 写真集発売予定