<国内企画展/地域との共生>横田國平写真展「心の故郷 中越後」
かつて新潟県本州部は越後国でありました。その越後国で京に近い地方は上越後(かみえちご)、遠い方は下越後(しもえちご)と呼ばれ、その中間の地域は中越後(なかえちご)と呼ばれていたといいます。近代では中越後を略して「中越」「中越地方」と一般に呼んでいます。
新潟県の中程に位置する柏崎市を中心にして中越地方の山村風景とそこに暮らす人々の営みが感じられる写真撮影を約17 年続けています。友人・知人から「故郷は良いね!」「遠く離れると懐かしく新鮮に感じる。」と言葉をいただきますが、近くに住むが故に冷静に、そして日々の生活の中にややもすると埋没してしまう風景を撮り残すことの難しさを感じるこの頃です。
中越地方の雪深い山里は水田を中心とした緑豊かな山里が点在し、いずれも周囲を山に囲まれ、清流に挟まれ、冬には幾日も雪が降り続く豪雪地帯です。
長い冬が終わると待ちわびた春が訪れ、それは人々にとって希望の春です。山の幸である山菜も一斉の田仕事も雪消え水の恵みです。新緑の木々も初夏の蛍も川の魚も恵みの恩恵です。四季の移ろいは早く、紅葉の秋から雪消えまで長い冬に閉ざされた白い世界の中で、人々はお互い寄り添いながらそして助け合いながら集落として地域に根差した営みを続けて来ました。
それは山里の自然環境が暮らす人々の生活に様々な恩恵をもたらすと同時に様々な苦労をもたらすからです。それらを克服するために、山里の人々はお互いを尊重しながら支え合いながら地域共生をしています。それはまさに「持続可能な社会」であります。中越後と呼ばれていた時代から綿々と受け継がれてきた中で自然をこよなく愛し、自然の持つ良さや尊さを感じてきたのです。「住めば都」「この地が一番」と笑いながら話す人々には山里に暮らすことの誇りと暮らすことのはりあいがそこに有ることに他ならないと感じます。
近年、新聞・テレビの報道で過疎が連日のように取り上げられるようになり久しいですが、中越地方の山里も過疎による高齢化の波は大きく、大波は常に容赦なく押し寄せておりいつ飲み込まれてしまうやら判りません。高齢の方々が生業としての稲作や自給的な畑作をして地域内自給を行っていますが、それは近隣の別居子が支援して集落が維持されているところが大きい傾向にあります。しかし人々は風雪に負けず地域で助け合いながら日々の生活や作業に生き生きと暮らしています。「よう。来たか。」の一言をかけてくださる地域の「今」を後世の人々に伝える一つの手段として写真が役立ち、写真から山里の人々の姿を感じ取って記憶の奥に残して欲しいと願っています。(横田國平)
<国際展/アジアの写真家たち2022 中国 江蘇省>韋鳴写真展
東京写真月間では、アジアの国々との文化交流を目的に2004年から「アジアの写真家たち」を創設しました。この写真展では、開催国の写真家たちの視点を通してその国の名所、旧跡、伝統文化、人々の暮らしを紹介しています。そのことによって日本と開催国との相互理解を深めることに貢献してきました。
今回、2020年に計画し新型コロナウィルス感染症の影響で2年延期となっていたアジアの大国「中国」から-江蘇州-を取上げ開催いたします。江蘇省は中国東部に位置し上海市と接する面積約10万k㎡、人口約8.5千万人を擁する州です。州都は南京市で明の時代には首都でもあった歴史のある市です。また、中国で3番目に大きい淡水湖である太湖を有するなど「東洋のヴェネチア」とも言われています。例年は海外と写真文化交流の目的で出展者の中から数名の写真家を招聘していましたがコロナ過を考慮し、16名による出展者の写真展のみを6会場で開催いたします。
※ニコンプラザ東京 THE GALLERYでは「韋鳴写真展」を開催いたします。
1958年 新潟県柏崎市に生まれる
2005年 自宅を中心とした新潟県中越地方の写真撮影を本格的に始める
2014年 新潟県長岡市展 市長賞受賞(過去4回入賞)。無鑑査に推挙され長岡市美術協会に入会
2016年 新潟県柏崎市展 市展賞受賞(過去4回入賞)。無鑑査に推挙され委嘱作家
2019年 写真集『雪里』発刊
2020年 個展「雪里」富士フイルムフォトサロン東京・大阪・名古屋、富士フォトギャラリ-新潟
2021年 個展「雪里」長岡市立長岡美術センタ-、柏崎エネルギ-ホ-ル
2022年 東京写真月間2022<国内企画展/地域との共生>「心の故郷 中越後」 ニコンプラザ東京 THE GALLERY
1957年生まれ
中国写真家協会会員、江蘇省蘇州市写真家協会理事
2007年個展を開く、「韋鳴白黒撮影集」を出版