この「The changing same」シリーズは、2017年から東京の都市の周縁地域を繰り返しロード・トリップし、オリンピック・パラリンピックに合わせて再開発されてきた東京の都心部とは対照的に、時代から取り残され衰退が著しい事物、近代化や高度経済成長のもと乱開発され傷ついた土地、基地周辺やロード・サイドで遭遇する奇妙な光景などを記録し、一本のロード・ムービーのように再構成したシリーズです。
まず撮影にあたって、その土地の地理や地質的な側面からアプローチし、歴史、文化、政治、経済などの様々な分野のリサーチを進め、写真の制作や編集に際しては、アメリカの伝統的な写真の系譜がもっていた方法論や映画がもつ批評性を参照にしています。
作品の中ではとりわけ戦後の日本を規定し、我々の生活に物質的に深く浸透し、内面化してきたアメリカ化とそれらがもたらす神話作用が特に重要な問題系として対象化されています。既に様々なメディアを通して身近なものとして消費され、模倣、複製されてきたアメリカ的イメージを、東京の周縁においてロード・トリップしながら探査し、写真化するプロセスにおいてもアメリカ的イメージを擬装することにより、アイロニカルで矛盾を孕んだ重層的な視点を作品に持ち込んでいます。
このことにより、近代やイデオロギーについて再考し、今日におけるグローバルなものとローカルなものの差異や相似について可視化したいと考えています。また、経済におけるグローバリゼーションと政治におけるナショナリズムという相反する事象が二重化し、現実と虚構の境界が曖昧化した今日のディストピア的な状況についても作品を通して問題提起したいと考えています。
石川 幸史(イシカワ コウジ)
1978年 愛媛県生まれ
2001年 愛媛大学 教育学部 情報文化課程 卒業
2005年 東京綜合写真専門学校 第二学科 卒業
受賞歴
2019年 Belfast Photo Festival Award Shortlist
2019年 Kassel Dummy Book Award Shortlist
2017年 Daikanyama Photo fair/Magnfy photo グランプリ
2017年 Japan Photo Award クリストフ ギイ賞
2017年 東川写真フェスティバル 赤れんがポートフォーリオオーディション2017 優秀賞
2015年 Kawaba New -Nature photo Award グランプリ
2015~2013年 Tokyo Frontline photo Award2015、2014、2013 入選
2013年 塩竈写真フェスティバル2013 kodak賞
2013~2012年 第6、7、8、9回写真「1_WALL」入選
2009年 EPSON カラーイメージングコンテスト2009 佐藤卓賞
個展
2018年 『The changing same』Alt_Medium
2018年 『This is not the end.』JINS渋谷
2014年 『This is not the end.』TAPギャラリー
2009年 『IRONIC SCENES』juna 21 /新宿ニコンサロン、大阪ニコンサロン
2007年 『DEADLOCKED』 ギャラリーニエプス