本作品は、東日本大震災にて大きな被害を受けた宮城県石巻市の定点観測写真です。震災、そしてその後の復興により、石巻は町のかたちが大きく変化してゆくのではないか。その様相を記録として残す事はできないか。私はそのような理由から、2011年から現在まで定点観測撮影を行ってきました。本写真展では、市内各所にて、2011年、2016年、2021年に撮影した定点写真、約40組を展示します。
東北最大の被災地となった石巻市では、震災とその後の復興により、町の形が従来から大きく変化する事となりました。津波による大きな被害を受けた水辺の地区では、住民は居住することができなくなり、新たな場所にて生活の再建を行う事となりました。人々の暮らしに身近であった海や川の水際には、巨大な堤防が建設され、人と風土との関係にも変化が訪れています。
震災から10年が経ちますが、石巻では現在でも復興事業が継続して行われており、新しい町へと変化が進んでいます。定点撮影では継続して撮影を行う事により、町の変貌を詳細に捉えることが可能です。かつて存在していたものが消失し、新しい風景が生成してゆく過程、その様相を記録し、思い見ることで、震災と復興について、より多角的に把握することができるのではないでしょうか。本作品が震災と復興、ひいては人と都市のありようについて再考する契機になれば幸いです。
(齋藤 大輔)
1982年 東京都生まれ
2006年 東京造形大学卒業。
出版社、新聞社などでのアシスタントを経て、2009年よりフリーランス。
2000年代より、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
ホームページ:https://www.02port.net
【写真展】
「sight seeing#1~#5」2007年~2009年 ガレリアQ 東京
「石巻市定点撮影2011/2015」2015年 コニカミノルタプラザ 東京
【受賞】
第17回コニカミノルタフォト・プレミオ年度賞特別賞