日本の農業は戦後、様々な機械や資材の導入により効率化と生産性の向上が図られてきた。高齢化が進む昨今では、ロボットや情報通信技術を活用した『スマート農業』なるものも推奨され始めている。
わたしが住む村はそのような変遷の只中にある典型的な田舎の農村だが、そんな中でも田畑で働く人々はいまだに健在である。機械化がどれだけ進んでも人間が行ったほうが良い作業が田畑にはまだ多く残されており、首を垂れ腰を曲げ、野良仕事に励む人々の姿を至る所で見ることができる。
我々の遠い祖先が直立二足歩行を始めたことで獲得した両手の自由は、人間に農という知恵をもたらした。その大地への営みが生んだ独特の前屈みの姿勢は、人間のたくましさと共に、如何とも避け難い腰への負担を伴ったぎこちなさをどこか帯びているようでもある。
田畑で働く人々の姿を見つめながら考える。食べなければ生きていけない私たち人間の身体を支えるのもまた人間の身体なのだと。
(宇賀神 拓也)
1976年生まれ
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒業。
大学卒業後、東京にて3年間商社に勤務した後にエチオピアに渡り、日本の中古農業機械のレンタル、販売を行う会社を設立。事業としては3年で頓挫するも、現地で野菜作りを学ぶ。
2011年帰国。2012年より長野県朝日村に移り住み、米野菜、味噌醤油を作りながら、主に自分が住む村をフィールドに撮影を続けている。
https://takuya-ugajin.com/
過去の展示
2018年6月 “ハイエナの夢” ( gallery201/東京)
2018年11月 “cave” ( GREEN FINDS KAMAKURA/鎌倉市)
2019年5月 “cave” ( 朝日美術館/長野県)
2019年10月 “朝日村の縄文土器展” (朝日美術館/長野県)
2019年11月 ”写真と作陶展” (花琳舎/大分県豊後高田市)