街中でふとした拍子に目にするネズミたち。彼らはどこに栖み、どんな暮らしをしているのか。そんな疑問から、ネズミたちの姿を求めて東京の街を歩きつづけた。
ネズミたちを撮影していくうちに彼らに対する印象がどんどんと変わっていった。ファインダーの中に映るネズミたちは必死で自らの生を全うしようとしている一匹の小動物だった。
ネズミたちの日常にはさまざまな苦難が押し寄せる。それでも彼らはそこで生きるしか無い。見慣れた東京の街もネズミたちの目線で眺めてみると違った景色に見えてくる。
都心では、なにが必要でなにが不要かは人間のさじ加減で決まってしまう。その中でネズミは真っ先に排除される存在だ。
2020年を迎え、いくつかの街からネズミたちがいなくなった。オリンピックを前に都心の浄化が進んだ結果だ。
これは、誰にも惜しまれず消えていく小さないのちの輝きを捉えた写真展。
(原 啓義)
1970年生まれ
<個展>
『ちかくてとおいけもの』2017年11月 銀座ニコンサロン、12月 大阪ニコンサロン
『そこに生きる』 2019年6月 銀座ニコンサロン、7月 大阪ニコンサロン
ほか多数
<書籍>
「街のネズミ」(たくさんのふしぎ 2020年7月号)福音館