夏は、いつも鎮魂の祈りではじまる。
沖縄・広島・長崎と続く戦争の惨禍がある。
繰り返される自然災害は年々益々甚大なものとなり、人が起こす事件・事故の犠牲者も限りがない。
一つを祈り、その上にまた新たな祈りを積み重ねていく季節・・幾重にも問いただされる重い課題に向き合うとき、未来への漠然とした不安は、明確なものとして存在し始める。朱の色には呪気が宿っているのではないだろうか・・・
この夏、盆を前後して私は唐突に三人の葬儀の場に出向くことになった。
予期できなかった別れがあった。理不尽な思い、「笑う」しかない諦念の中で、それでも淡々と繰り返されていく日常・・
夏に受け継がれていかなければならない一つの思いと、夏に出会った個人的な情景や事物が折り重なって混じりあい、澱のようなものを生み出していく。
それが鎮まるまで・・透明で深い水の淵に変わるまでを・・
「朱夏の果」に記そうと思う。
<注>
朱夏(しゅか)という言葉は陰陽五行説に由来しています。
五行説において、夏の色は朱・赤であることから、夏の異称が「朱夏」となったわけです。
因みに、春の色は青で「青春」、秋の色は白で「白秋」、冬の色は玄(黒色)で「玄冬」となります。
(和田マサ子)
1948年 岐阜県生まれ
1989年 故林忠彦氏と夫婦で対談する。「写真する旅人」に記事掲載
1990年 岐阜県関市 ギャラリー・ムース にて 和田喜博との二人展「風写録」開催
1992年 東京銀座 コンタックスサロンにて 二人展「獺祭・風写録」開催
1993年 名古屋 富士フォトサロンにて 同展開催
2003年 岐阜県関市 ギャラリー・ムースにて 二人展「時の居場所」開催
2013年 写真雑誌「フォトコン」の「一生懸命フォトグラファー列伝」11月号に記事掲載
2013年 東京新宿 ニコンサロンbisにて 二人展「コノ世ノハナ」開催
2014年 岐阜市 じゅうろくてつめいギャラリーにて 同展開催
2014年 大阪市 大阪ニコンサロンbisにて 同展アンコール展開催
2016年 第22回酒田市土門拳文化賞奨励賞受賞 「声がきこえる」
酒田市土門拳記念館・東京・大阪ニコンサロン受賞作品展にて、作品の一部掲載
2017年 岐阜市じゅうろくてつめいギャラリーにて 「声が聞こえる」受賞記念展開催
岐阜県郡上市 図書館にて「声がきこえる」展開催