2021年2月2日(火)~2021年2月15日(月) 日曜休館、2/11(木)休館
私が生まれ育った台湾は、小さな島国ながら豊かな自然を擁し3000メートル級の山々が268座ある。
しかし、入山禁止の歴史や民間信仰での怪異譚などもあり、都市部に住む人々にとって山は馴染み深いものではなく、むしろ暗い印象を抱く対象ですらある。私も幼い頃から山に関する怪談を数多く聞かされてきた。
幼少期を都市部で過ごした私は無機質なコンクリートに囲まれて育った。そんな環境を当たり前のように思いながらも、いつしか息苦しさを感じるようになっていた。
ある時、仕事で日本の山に登ってみるとそれまでの山に対する印象が大きく変わった。カメラを手にして、まるで導かれるように深く緑豊かな自然に惹かれていった。
日本の神道と同じく、台湾でも古来より山や森を神聖な場所として、あらゆる自然物に神が宿るという自然信仰がある。
自然に対する畏怖から、敬意を持ち、森に溶け込む。
様々な命と出会い、森の中で自らと対話をするうちに、自分を取り巻く世界への認識は一層深まりゆく様に感じる。
(張 容甄)
1990年 台湾生まれ
2015年日本写真芸術専門学校 卒業