ニコンサロン
香取 声　写真展情け島

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2021年1月5日（火）～2021年1月18日（月）　日曜休館

東京郊外に生まれ育ち、「故郷」という感覚に憧れていた私は、あるとき訪れた八丈島が自分の持つ理想の「故郷像」に重なって見え、繰り返し訪れるようになる。
しかし、回を重ねるごとに、島の生活の現実的な部分が見えはじめ、私の抱いた理想像など、所詮外部の人間による押し付けでしかないのだと気づく。
過去を振り返れば国もまた、江戸時代には流刑地、大戦時には軍事拠点などと、八丈島に様々な役割を担わせてきた。戦後は「東洋のハワイ」と呼ばれる人気の旅行先だったが、しばらくすると観光客は減少。その象徴である大きなリゾートホテルは、今は廃墟として佇んでいる。
特有の文化と伝統を持ち発展してきた八丈島だが、考えてみれば、抱える問題そのものは、過疎、働き手の減少など、国内の他の地域と同様なのである。それならば、この島を見つめることは、その独自性に触れると同時に、どの地域もが抱える普遍的な構造と向き合うことにもなるのではないだろうか。それは即ち、自分と社会、そしてこの先の日本を考えることでもある。

（香取 声）