私はここの日本猿を撮影して5年近くになる。まだ幼い頃に地獄谷へ親に連れていってもらったことがある。そのとき、露天風呂があったが入っているときに一頭の日本猿がやってきて威嚇された。素っ裸で威嚇された私はびっくりしていた記憶にある。
1970年にアメリカの雑誌「LIFE」で地獄谷の日本猿が温泉に浸かる姿が表紙として使われたことによって広く知られるようになった。
ここの日本猿はおよそ160頭からなる大きな群れである。冬には、氷点下10度を下回ることがある雪の降る自然環境に暮らす猿たちである。
かれらの日々の生活を観察し撮影を続けるうちに自然の中で生き抜く逞しさ、寒さや飢えを乗り切る知恵と協調性に関心を持った。厳しい生活もある中で幸せというものを感じているんだろうか。あるいは本能で生きているんだろうか。どんなことを考え、感じているんだろうか。
撮影していくうちにかれらに生き物として美しく、尊厳を感じ、生き方に自分には真似できない強さを感じた。
(清野健人)
※ニコンサロンは10月23日(金)より、「ニコンプラザ銀座」から「ニコンプラザ東京」に移転いたしました。
1990年 ロンドンに生まれる
1997年 ロンドンから東京に移住
2014年 東京都市大学工学部機械工学科卒業
2016年 日本写真芸術専門学校写真科卒業
日本写真芸術専門学校ネイチャーフォトゼミ出身
SSP:日本自然科学写真協会(SOCIETY OF SCIENTIFIC PHOTOGRAPHY)所属