2019年4月23日(火) 〜 2019年5月 2日(木) 日曜休館
2019年6月13日(木) 〜 2019年6月19日(水) 日曜休館
裸足で立ち、太鼓を打つと、その鼓動は体幹から土へと響きわたる。
繰り返す鼓動に肉体をまかせ踊り続けると、
心臓は掴まれ、やがて自我は剥がれ落ち、
土から目覚めた、自分に連なるものに呑み込まれ、一体となる。
福島からハワイへ、
その唄が渡ってから1世紀を過ぎて、
同じ唄が避難者とともに、故郷を追われた。
––– KIPUKA
溶岩流の焼け跡の植物、再生の源となる「新しい命の場所」を意味するハワイ語、
この言葉をずっと頼りに、私はハワイと福島への旅を続けた。
日系移民が築いたサトウキビ畑の町はあとかたもなく消え、
福島第1原発付近から住人が消えた。
消失と喪失の繰り返しの中で生き続ける唄は、
生き残った私たちの命の種子のように、
ふるさとを離れても再び広がり、
黒い大地を森にする。
岩根愛
第44回(2018年度)「木村伊兵衛写真賞」(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版、特別協賛:ニコンイメージングジャパン)は、岩根愛さんが受賞しました。
木村伊兵衛写真賞は、故・木村伊兵衛氏の業績を記念して1975年に創設され、各年にすぐれた作品を発表した新人写真家を対象に表彰しています。受賞者は、写真関係者からアンケートによって推薦された候補者の中から、選考委員会によって決定されます。今回の選考委員は石内都、鈴木理策、ホンマタカシの写真家3氏と作家の平野啓一郎氏です。
岩根愛さんの受賞作は写真集『KIPUKA』(青幻舎)とKanzan Galleryで展示された作品「FUKUSHIMA ONDO」です。ハワイにおける日系文化に注目し、ハワイと福島とのつながりについて作品にまとめられました。今回の展示では受賞作の一部をご覧いただきます。
東京都生まれ。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学。オフグリッド、自給自足の暮らしの中で学ぶ。
帰国後、アシスタントを経て96年に独立。雑誌媒体、音楽関連等の仕事をしながら、世界の特殊なコミュニティーでの取材に取り組む。
2006年以降、ハワイにおける日系文化に注視し、13年から福島県三春町にも拠点を構え、移民を通じたハワイと福島の関連をテーマに制作を続ける。
18年、初の作品集『KIPUKA』(青幻舎)を上梓。