写真展内容
本展は、これまで「海を渡って」と題したシリーズを発表してきた作者による、「日本×満州」「日本×ミャンマー」に続く3作目である。2016年2月に出版した写真集『海を渡って』にも収めた日系ブラジル移民をテーマにした作品を展示する。
前2作と同様に、撮影地域によって作品を上下に分け同時に進行する構成で、上段に日本で生活する日系ブラジル人の姿を、下段にブラジルで生活する日系ブラジル移民の姿を並べている。
1908年にブラジル日本移民の歴史が始まり、戦前に約19万人、戦後に約5.4万人もの人々がブラジルへと渡った。初期のころはコーヒー農場の労働者が中心であったが、次第に移民会社や個人がまとまった土地を入手し、そこへ自営農を目指して入植する形が主流となった。その後、世代をつなぎ、現在では130万人ともいわれる日本人、日系人がブラジルの地で生活している。
一方で日本の労働者不足を補うため、90年に日系人のビザ取得が緩和されると、日系ブラジル人の日本への「出稼ぎ」という逆流現象が起き始め、多くの日系ブラジル人が生活する地域も存在するようになった。
この作品を通して日本、外国、日本人について深く考えるきっかけになればと作者は思っている。
カラー75点。
作者のプロフィール
鶴崎 燃(ツルサキ モユル)
1975年愛媛県生まれ。中部大学土木工学科卒業。名古屋ビジュアルアーツ写真学科卒業。写真家・大石芳野氏の助手を経て、現在はフリーとして活動。
受賞歴に、2009年三木淳賞奨励賞、10年ヤング・ポートフォリオ選出、15年ビジュアルアーツフォトアワード大賞がある。