写真展内容
黒潮は台湾の東方から沖縄、奄美、トカラ列島、大隅諸島へと琉球弧を流れる。奄美あたりから太平洋側に向かう本流、その分流は五島、対馬島、日本海へと向かう。その温暖な海流は、島に豊穣をもたらし精神文化を育くみ、また悠久の潮路は幾多の歴史も覚える。
沖縄や奄美の島々では、旧暦の節目の行事が大切に伝承され、海の彼方は楽土でもある。憎めない妖怪「ケンムン」や「キジムナー」が語り話に伝わり、また祭りなどに現れる『仮面神』は南方起源を思わす。
先の大戦で唯一、本土決戦となった沖縄戦は米艦隊の慶良間諸島の砲撃から始まった。慶留間島、座間味島や伊江島でも『集団自決』や『米軍の土地強制収奪』の史実が今も語られている。トカラの島々は、日本の秘境と呼ばれる厳しい生活環境で高度経済成長とともに人口減少で集団移住した島もある。定期船が大型化した今も離島の労苦はあるが、島は変わり始めている。豊かな環境と、穏やかな島時間に魅せられた若者の移住が相次ぎ、島の産業伝承や新しい生業の模索で新しい風が吹いている。
これらの写真群は、沖縄の久高島から、五島列島の小値賀諸島までのいくつかの島々の記録の断片です。 (小林 惠)
カラー65~70点。
作者のプロフィール
小林 惠(コバヤシ ケイ)
1948年香川県豊島生まれ。日本写真専門学校卒。写真家・棚橋紫水氏に師事。広告代理店、福祉施設勤務の後、75年からフリーで写真活動を展開。日本写真家協会会員。
写真展に、74年「この子供たちの奪われたものは」(銀座ニコンサロン)、94年「小さな島を渡る風」(銀座ニコンサロン)、99年「咲く桜」(新宿ニコンサロン)、04年「過ぎしかの日」(銀座ニコンサロン)、2006年「臺灣島の記憶」(コニカミノルタプラザ)、08年「光の祝祭」(津田塾大学 津田梅子記念館)、10年「セイダッカ族・昭和の記憶 櫻と川中島 二つの村で」(新宿ニコンサロン)、「風景色 フクシマノート」(12年銀座ニコンサロン、13年大阪ニコンサロン)、14 年「フクシマノート」(BC Space Gallery/カリフォルニア)がある。15年「TAP review 2015/Spring」(米国)に参加。
写真集に、『心の島』(鯨吼社)、『光の祝祭』(著・小塩 節、日本基督教団出版局)などがある。