Nikon Imaging
Japan
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銀座ニコンサロン 2016年9月

ニコンサロン特別展
江成 常夫 写真展

写真
多摩川 Tama River
1970-1974
8/31 (水) ~9/13 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真 写真

戦後の日本は経済を至上価値としてきたことから、奇跡と呼ばれるほど復興、発展を遂げてきた。しかし、その一方で水俣病に象徴されるように海を汚染し、列島改造のもと自然を破壊してきた。そうしたなか、東京の空が光化学スモッグに覆われ、都民の〝水瓶〟としての多摩川が砂利採取や生活排水によって〝死の川〟となるのは、東京オリンピックや大阪万博が世界の耳目を集めた1960年代後半から70年代にかけてである。
堰堤を滑り降ちる汚水から妖魔のような泡が湧きあがり、風に乗って舞いあがる。それは川の精霊が怒り狂って叫んでいるように思えたりする。
上流では鶯や山女が自然を謳歌する反面、岸辺を下るごと鯉や鮒、ウグイやオイカワが酸欠死し、そこはまぎれもなく〝死の川〟である。そこが首都の川であれば、この国の自然に対する無知狼藉ぶりが見てとれる。
人間は古来、過去の過ちを未来の教訓としながら、その間違いを忘れることを生の糧とする指摘がある。事実、半世紀前の一河川の汚染が、どれだけ記憶されているかは、心もとないところである。しかし命の源泉である川が、死に瀕したとあれば、人間の生死に通じる、時を超えた重大事である。
すでに半世紀が過ぎた今、生活排水の泡が川面を埋め、魚の死骸が浮かぶ首都の川を、あえて写真展として纏めたのは、未来は過去の罪の反省によって築かれる、と考えるからである。折しも今年は水俣病が公式に確認されて60年に当たる。戦後の経済至上の価値観がもたらした、首都の多摩川を死に追い込んだ記憶が、未来の人間と自然との共生を占ううえの縁(よすが)になれば仕合せである。   (江成 常夫)

モノクロ約50点。

作者のプロフィール

写真

江成 常夫(エナリ ツネオ)
1936年神奈川県相模原市生まれ。62年東京経済大学経済学部卒業。同年毎日新聞東京本社に入社。74年同社を退社しフリーとなる。
74年から75年、ニューヨークに滞在。敗戦後、米兵と結婚し渡米した日本人「戦争花嫁」と出会い、再度渡米。カリフォルニアに滞在し、花嫁と家族を撮影取材。
以後、一貫して、昭和の15年戦争の発端となった「満洲国」(中国東北部)をはじめ東南アジア、オセアニア諸島を巡り、大戦のもとで翻弄された声を持たない人たちの声を写真で代弁し、戦後日本人の現代史に対する精神性を問い続ける。
88年からニッコールクラブ幹事、98年から07年まで同クラブ会長を務める。九州産業大学名誉教授。
主な写真集・著作に、1976年『ニューヨークの百家族』(平凡社)、81年『花嫁のアメリカ』(講談社)、84年『シャオハイの満洲』(集英社)、同年『花嫁のアメリカ』(講談社)、86年『花嫁のニッポン』(講談社)、88年『シャオハイの満洲』(新潮社)、89年『ニューヨーク日記』(平凡社)、95年『まぼろし国・満洲』(新潮社)、同年『記憶の光景・十人のヒロシマ』(新潮社)、2OO2年 『ヒロシマ―万象 : Sleeping souls of Hiroshima』 (新潮社)、O5年『レンズに映った昭和』(集英社)、同年『記憶の光景・十人のヒロシマ』 (小学館)、06年『生と死の時』(平凡社)、11年『鬼哭の島』(朝日新聞出版)がある。 
受賞歴に、1977年「第27回日本写真協会新人賞」、81年「第6回木村伊兵衛賞」、85年「第4回土門拳賞」、同年「第52回毎日広告デザイン賞 (公共福祉部門)」、95年「第37回毎日芸術賞」、2001年「2001年度日本写真協会年度賞」、同年「第50回神奈川文化賞」、同年「2001年度相模原市民文化彰」、02年「紫綬褒章」、10年「旭日小綬章」、15年「酒田市特別功労表彰」がある。

松本 コウシ 写真展

写真
泳ぐ夜 其の弐
Castaway in the still night 2
9/14 (水) ~9/27 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

作者が長年モチーフとしてきた「夜の写真」は、2種類がある。「ヒトとは関係がなかった事象のごとく自らを主張する風景」と「ヒトを受け皿とする夜の街を現した人物スナップ」である。2つの夜は、まるでコインの表と裏のように、決して交わることなく、蓋然性をもって存在すると作者は言う。後者の作品を展示する本展は、2009年開催の写真展「泳ぐ夜」の続編である。
たゆまなく流れる時間、一喜一憂する間もなく上書きされていく記憶。ヒトは矛盾と幻覚に抗い、何処かとりとめのない"物語 = 街"の中で居場所を求め彷徨っていた。
「泳ぐ夜」は、時の流れが残していく形見。時計の針を巻き戻すように人混みの中を歩く。どこかに失ってしまった"時の片"が落ちているはずだ。僕は夜の繁華街で何度もライカのシャッターを切った。真新しい廃墟のような街で時という幻影に埋没するヒトたちに向けて...。夜は制約から解放されたヒトの本能が蠢いている。自分が生きた現実を夜という回想の中で幻影へと変容させているのだろうか?
すべての情報をシャットアウトすれば、時間はいとも簡単に止まる。外的ファクターなどは所詮観念的な表象であったということだ。やがて、自分が生きているほんとうのゾーンだけが浮き上がってくるのだろう。この空っぽの日常に自らの手で如何なる時間を詰め込むのか?

生きること―、 いつしか美しき追憶となるべく時間たちへ― 。

Castaway in the still night
~ ルノワールへ捧ぐ ~
(松本コウシ)
     
カラー・モノクロ約50点(2点一組)

作者のプロフィール

松本 コウシ(マツモト コウシ)
1961年広島県生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業。84年「京阪沿線」(アサヒカメラ誌)で写真家としてデビュー。25年以上にわたり、「夜」を写真の分野として追求している。
写真展に、「眠らない風景」(93年~94年キヤノンサロン銀座・名古屋・梅田)、「続・眠らない風景」、2009年「泳ぐ夜」(キヤノンギャラリー銀座・大阪・福岡)、「午前零時のスケッチ」(14年銀座ニコンサロン、15年大阪ニコンサロン)などがある。
写真集に、「眠らない風景1989-2003」(求龍堂)、「続・眠らない風景」(求龍堂)、「泳ぐ夜」(日本カメラ社)、「午前零時のスケッチ」(日本カメラ社)などがある。

須藤 明子 写真展

写真
to LHASA
9/28 (水) ~10/11 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

ラサ(LHASA)を中心に、チベット自治区の周りにもたくさんのチベット人が住み、チベットの文化と宗教が根付いたエリアが広がっている。今回は甘粛省、青海省、四川省にまたがるアムド地方(蘭州、臨夏、郎木寺、夏河、同仁、沢庫、瑪沁、西寧)を訪れた後、私はラサへと向かった。

2008年の暴動があってから、だいぶ様子が変化している。以前より様々な事が、自由でない、制限された中でチベット人は生活している。しかし、「祈る場所は奪われても、心の中で祈る、祈る事を奪う事は出来ない」と皆が口を揃えて言う。
多くのチベット人は冗談が好きで、チャーミング。それはもともと備わった気質のようなものか。彼らは「地球上のすべての生き物が、幸福でありますように」と祈る。
その姿は、強く、たくましく、そして、とても美しい。

2005年よりチベットを撮影し、今回は2010年以来の6年ぶりの再訪。  (須藤 明子)

カラー約35点。

作者のプロフィール

須藤 明子(スドウ アキコ)
1974年東京都生まれ。日本女子大学文学部卒業。
写真展(個展)に、2005年フォト・プレミオ「間-inbetween-」(コニカミノルタプラザ)、07年「邂逅」(キヤノンギャラリー銀座ほか)、09年「cuba」(Place M)、11年「encounter」(Juna 21新宿ニコンサロン、Juna 21大阪ニコンサロン)、13年「白く静かな空の下」(コニカミノルタプラザ)、15年「夏の終わり-シベリア-」(Place M)などがある。
グループ展に、12年「ASPHALT/ Photography on ASPHALT」(Gallery TANTO TEMPO/神戸)、「Reflection-9人の視点」(福島県会津若松市、喜多方市)、13年「Reflection -9人の視点ver.2」(福島県南相馬市)がある。

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