筋野 健太 写真展
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長春 2006-2015
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7/26 (火)
~8/1 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
中国・吉林省長春市。10年前の夏、作者が乗っていたタクシーが不意に大通りをそれた。渋滞を避けて裏道の小さな通りを進むと、黄土色の古びた建物が立ち並んでいて、人々のにぎわいがあった。ここはかつての満州国の首都、新京の日本人街跡だった。戦後日本人が去り、主に山東省から長春市に入ってきた人たちの街になった。
しかし作者が訪れたそのころには、もうすでに取り壊しのカウントダウンに入っていた。戦後ずっと住み続けた彼らは「私はこの家で生まれ、育った」と胸を張って言った。建物も人も自然の摂理のように、新たなものへと代わっていく。それらが繰り返され、土地の歴史が作られていく。それは仕方のないことだ。
それでも作者は失われゆくこの街に、身体を置き、往時の日本人たちに思いをはせ、住民たちと同じ時間を共有したかった。そうすれば、自分の存在を確認することができた。逆にそうしなければ自分の心は、スカスカだった。
街が壊されていったある日、作者は蓮の花を持った男を見かけ追いかけた。交差点で立ち止まったので、花のにおいを嗅ごうと、のぞき込んだ。しかしそれは造花だった。
カラー約50点。
作者のプロフィール
筋野 健太(スジノ ケンタ)
1980年東京都生まれ。2001年中国・黒龍江大学国際文化教育学院修了。03年中央大学経済学部卒業。
鈴木 康史 写真展
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Photosynthesis
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8/2 (火)
~8/15 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
太陽が現れると、館内の温度や湿度は一気に上昇する。輝く光が集められ、いや応なしに成長の加速を促す。不自然に囲われた人工物の内側で、植物たちはさまざまな姿を見せつけてくる。
当初、光にもたらされる植物の形の変化や色の際立ちを捉えるつもりで撮影を始めたように作者は思っていたが、光線が厚板ガラスを透過あるいは反射し、葉や枝や幹に照り映える様を撮り進めることで、次第に、温室という装置を介して、朧げで漠とした光の姿を、より具体的に可視化しようと試みていった気がしている。
密集した枝を通り抜ける細く絞られた光。バナナやパパイアの大きな葉に遮られてできるくっきりと濃い影。水面に結ぶ光の粒。ありとあらゆる光のかたちを定着できたら。そんな思いが、作者の温室通いの頻度をさらに上げていった。
カラー約40点。
作者のプロフィール
鈴木 康史(スズキ ヤスフミ)
1968年大阪府生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。中島清一氏に師事した後、フリーランスのカメラマンとして独立。
金川 晋吾 写真展
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father 2009.09-
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8/16 (火)
~8/29 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
休館:8/21(日)・22(月)
写真展内容
私の父には蒸発癖があった。私が大学に入った2000年ごろから、父は家族とは離れて一人で暮らすようになった。一人になってからの父は、平穏無事に暮らしていると思われていた。だが、08年の9月、ひさしぶりの蒸発があった。そのときは2週間ほどで戻って来たが、それを機に父は仕事には戻ろうとしなかった。このまま放っておいたらどうなってしまうのかわからないような状況にあったが、父は何もせずにただ家にいるのだった。父がこのような状況に陥ったことをきっかけに、私は父と関わりながら、父を撮影することを始めた。
撮影は09年の9月で一区切りがついた。自己破産の手続きが完了し、持ち家を引き払ってアパートに移り住み、生活保護を受給するという新たな生活が始まったからだ。父はついに何もしなくても生きていける生活を手にした。父の生活は安定した。だが、安定した生活を送っている父は、また別の意味で私を不安にさせた。何もしなくても生きていける生活を手に入れたがために、父は本当に何もしなくなってしまった、と私は思った。「このままでいいのだろうか。何かさせないとすぐにぼけてしまうのではないか」私は不安になった。だが、父自身はそんな不安などまったく感じていないようだった。「何もしない父」を前にして、私はカメラをそれまでの中判カメラから大判カメラに変えた。そうすることで、「そこに父がいるということ」、そのことを撮ろうと思ったのだった。 (金川晋吾)
作者のプロフィール
金川 晋吾(カナガワ シンゴ)
1981年京都府生まれ。神戸大学発達科学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科博士課程修了。
写真集に2016年『father』(青幻舎)、受賞歴に第12回三木淳賞がある。
ギャラリートーク開催のお知らせ
作者の金川晋吾氏とアーティスト・飯山 由貴氏のトークショーを写真展会場にて開催いたします。
ぜひご参加下さい。
日時:8月20日(土)18:30~20:00
出席:金川晋吾 × 飯山 由貴(いいやま ゆき)
会場:新宿ニコンサロン
※入場無料・予約不要です。当日は直接会場にお越し下さい。
藤本 篤史 写真展
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カーテンコール
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8/30 (火)
~9/5 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
彼の舞台は喝采と共に幕を閉じた。
カーテンで仕切られた境界。
舞台のあちらとこちら。
拍手を送る者と送られる者。
いつかは僕の劇も終わる。
僕が喝采を受ける者になるかどうかはわからない。
しかし今は観客として、僕のただ一人の祖父に拍手を送りたいと思う。
これらの写真を今は亡き祖父に捧げる。 (藤本 篤史)
「自分自身」をテーマに写真制作を続ける作者。唯一の祖父が亡くなったことをきっかけに、自らの生といつか訪れるであろう死を見つめ直すシリーズ。
カラー50点。
作者のプロフィール
藤本 篤史(フジモト アツシ)
1991年群馬県生まれ。受賞歴に、2014年コニカミノルタ「フォト・プレミオ」入賞がある。