写真展内容
ダッカへは2013年の5月5日から7月28日までと、2015年の4月22日から7月19日までの2回の渡航で、合わせて半年近く作者は滞在した。バングラデシュの首都・ダッカの人口は約1,500万人である。経済の中心であるモティジール地区と下町風のオールドダッカの間に位置するグリスタン地区に拠点となる宿をとって、作者は人混みの中を歩いた。
ダッカは気さくでその人らしさをまる出しで生活している人が多い印象を受けた。そんな人や街を受け止める気持ちで作者は写した。今回の写真展は、人の息づかいや街の喧噪、光、雨期の湿気、作者の視線などが感じられる、そのときのダッカの生々しい記録となることを作者は目指した。
外輪船や馬車、無数の小さな渡し舟などオールドダッカに広がる昔ながらの街並みは、このままでは長くは存続できないだろうと作者は感じる。世界遺産としてなんとか残せないものか、などと思っている。
カラー79点・モノクロ28点。
受賞理由
「DHAKA」は、約1,500万人が暮らすバングラデシュの首都・ダッカの下町、市場などの雑踏をエネルギッシュに歩き、そこで出会った人々がつかの間に見せた表情のスナップショットの集大成である。カラーとモノクロで写し撮られたダッカの人々は、裸のままの人間らしい活気にあふれ、見る者は人と人が交錯する息づかいに引き込まれる。
なお、最終選考には、山内氏の作品の他に、画一化されていない昔ながらに続く地方の個人商店を丹念にとらえた池本喜巳氏の「近世店屋考」、地球と人間の営みをグローバルに問い続け、開発や自然災害、都市の崩壊と創造を追い続けた広川泰士氏の「BABEL」、フィリピンに取り残された日系人を訪ね歩き、薄れゆく戦争の記憶に警鐘を鳴らした船尾修氏の「フィリピン残留日本人」の3作品が残った。
作者のプロフィール
山内 道雄(ヤマウチ ミチオ)
1950年愛知県生まれ。早稲田大学、東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)卒業。82年フリーランスとして、自主ギャラリーを中心に写真発表を始める。
主な写真集に、『街』(蒼穹舎)、『人へ』(私家版)、『上海』(私家版)、『HONG KONG』(蒼穹舎)、『野良猫』(mole)、『TOKYO、東京』(ワイズ出版)、『Calcutta』(蒼穹舎)、『HOLIDAY』(YK出版)、『TOKYO UP CLOSE』(ラットホールギャラリー)、『東京2005-2007』(蒼穹舎)、『基隆』(グラフィカ編集室)、『人へⅡ』(蒼穹舎)、『DHAKA』(東京キララ社)、『香港1995-1997』(shashasha)、『DHAKA2』(禅フォトギャラリー)がある。受賞歴に、97年伊奈信男賞、2011年林忠彦賞がある。