岸本 絢写真展
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彼の地
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9/29 (火)
~10/5 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
敷居を跨ぐと広がる景色は、作者に田舎の古民家を訪れた様な錯覚を抱かせた。海を渡った彼の地には、祖国の断片が残されていた。
終戦直後まで日本の統治下にあった台湾と韓国には、その当時日本人によって築かれた家屋が未だ現存している。戦後彼らは帰国を余儀なくされ、多くの家屋は取り壊される。一方残されたそれらは、現地の人々の住まいとして利用された。時を経て家屋は形を変えていく。それでもなお家々からは、祖国を離れた先人たちの生活の匂いを感じ取ることができる。
日本の外に今もなお生き続ける日本。そこに満ちる空気は、いびつに積もった時間を感じさせる。住居という空間を通して、植民地の歴史の痕跡を垣間見る。モノクロ約30点。
作者のプロフィール
岸本 絢(キシモト アヤ)
1989年大阪府生まれ。2012年上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業。15年日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークゼミ卒業。
中里 和人写真展
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lux
water tunnel land tunnel
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10/6 (火)
~10/19 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
房総半島 (千葉県)と十日町周辺 (新潟県) は、ごつごつした壁面に野性的な地層の露出した素堀トンネルが無数残っている。
どちらも柔らかい地層のため穴が掘りやすく、耕地のない場所に少しでも田んぼや植林耕地を作りたいという共通点から掘られた。房総と新潟でトンネルが掘られるようになったのは江戸時代まで遡り、今も現役として使われている。
内部に水の流れるトンネルを、房総では川廻し(かわまわし)、新潟では瀬替えと呼ぶ。瀬替えの中でもトンネルの瀬替えを間府 (まぶ) と呼んだ。
つるつるした現代の構造物と対照的な素堀トンネルに入っていくと、複雑な地形が胎内巡りを喚起させ、等身大に近い穴の中では、いつの間にか日常の結界を越えて、何千年、何万年という時間を遡り、他所の惑星に紛れ込んでいくような無重力感を作者は体感した。
これまで林道の奥に隠れていた素堀トンネルは、光 (lux) を見る絶妙な装置であり、浸食と風化を繰り返し、太古からの光の記憶を化石化したアニミズムランドスケープでもあった。
カラー30点。
作者のプロフィール
中里 和人(ナカザト カツヒト)
1956年三重県生まれ。写真家。東京造形大学教授。79年法政大学文学部地理学科卒業。 日本の地誌的ランドスケープを中心にした写真展、写真インスタレーション、写真ワークショップを各地で開催。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」「同展2015」に参加。
写真集に『湾岸原野』(六興出版)、『小屋の肖像』(メディアファクトリー)、『キリコの街』(ワイズ出版)、『路地』、『4つの町』、『グリム』(以上、清流出版)、『東京』(木土水)、『R』(冬青社)、『ULTRA』(日本カメラ社)、『龍宮』(sana-v) がある。
共著に『夜旅』(文/中野純、河出書房新社)、『石はきれい、石は不思議』(INAX出版)、写真絵本『こやたちのひとりごと』(文/谷川俊太郎、ビリケン出版)、『東京サイハテ観光』(文/中野純)、『セルフビルド』(文/石山修武、以上、交通新聞社)がある。また、映像作品に『BOSO TIME TUNNELE』(sana-v)などがある。
受賞歴に、03年「第15回写真の会賞」、05年「さがみはら写真新人奨励賞」がある。
ベンジー 写真展
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島へ ~魂のデブリ~
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10/20 (火)
~11/2 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
「デブリ」とは「火山泥流などの堆積物」という意味である。
2013年11月20日、小笠原諸島の西之島近海に火山噴火による新しい陸地が誕生した。いまだ噴火は収まらず、新しい島は西之島を大きく飲み込むように成長している。この出来事は日々の生活の中でつい忘れてしまいがちだが、我々が「地震と火山の国」日本に住んでいるのだと再認識をすることになった。
伊豆諸島の三宅島もまた約20年周期に噴火すると言われている火山島だ。最近では2000年に噴火し、島民は火山ガスの影響で4年半もの避難生活を強いられた。そして今年2月、ようやく帰島10周年を迎えることができた。
作者がはじめて島を訪れたのは1987年。83年の噴火で溶岩流に飲み込まれた阿古地区の非日常的な光景と自然の再生に興味を持ち、90年までインスタントフィルムによるコラージュ作品「滅びと再生」を制作している。
2008年にたまたま見かけたテレビの旅番組、偶然にもそこにはあの懐かしい三宅島の風景があった。翌年、三宅島の雑種犬「ロック」のブログに引き寄せられるように再び島へ。
そして、情報収集のために島民たちのブログを見ているうちに彼らの写真の面白さに気が付き、作者は「「三宅島」島民4人と1ぴき」写真展を企画・プロデュースすることになった。
すると、彼らと話し合ううちに「どうして20年周期に噴火する島へ帰りたくなるのだろう?」という理解し難い思いが募ってきた。つまり20年前の自分では気にもしなかったことが不思議と気になりだしたのだ。そして作者は何度も訪問するうちに「もしかしたら三宅島それ自体が島民たちの魂を呼び寄せているのではないか? これは三宅島のすべてのものに宿るという神様の仕業に違いない」と思えてきたのだ。帰島への想い、それは「原風景」というよりは古きよき時代の信仰の名残のようなものに近いのかもしれない。三宅島は古代から「噴火と再生」を繰り返している。彼らはその大自然の中でその一部として生かされているのだ。
そして、いろいろあり、作者は6番目の島民「ベンジー」として20年ぶりにまたゼロから写真を始めることになった。
「デブリ」、それは魂の記憶の歴史。
インスタントフィルムによるコラージュなど、モノクロ・カラー約100点。
作者のプロフィール
ベンジー
1964年岐阜県生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。88年~91年に写真展「HEART ISLAND」、「miyake」を開催し、写真集「miyake」を発表。
2011年に写真活動を再開し、同年「「三宅島」島民4人と1ぴき」(コニカミノルタプラザ)を企画・プロデュース。写真展に13年「「土に還る」~はじまりの島へ~」(コニカミノルタプラザ)がある。