銀座ニコンサロン 2015年1月
写真展内容
2011年3月、福島第一原発事故から間もなく、初産をひかえた娘が里帰り避難をしてきた。作者は身重の娘と近くの佐鳴湖を散歩する日々が始まり、一本のヤナギの木まで歩くのが日課となった。その木は名木でもなければ稀少種でもない。何の変哲もない日常の光景を象徴して立っていた。その木は、人の世の日日の暮らしの、取り立てて語ることもない普通の明け暮れが、何よりも幸せではないかと教えていた。
撮り続けたヤナギの木は、風雨に晒され、次第に傾き、倒れかかり、今年に入って、ついに地面に倒れた。命あるものの無常の理に心を乱された。ところがある日、倒れた木の幹に若い芽を見つけたのだ。一本の木は土に還って行く。しかしそこにまた新しい命が生まれるだろう。
撮影にかけた三年余の間に、娘は二人目の出産を果たした。新生の命は太陽の光を浴びて、すくすくと育っている。カラー45点。
作者のプロフィール
市川 恵美(イチカワ エミ)
1948年生まれ。「アサヒカメラ」年度賞一位を始め、「日本カメラ」「フォトコンテスト」各誌で年度賞(2000年~)受賞。2011年第17回酒田市土門拳文化賞受賞。日本写真協会会員。
主な写真展に、05年「佐鳴湖日記」(ニコンサロンbis21)、10年「うらうへ」(新宿コニカミノルタプラザ)、11年「うらうへ」酒田市土門拳文化賞受賞作品展(土門拳記念館・新宿・大阪ニコンサロン)、12年「Free radical」(ギャラリー・コスモス/東京)などがあり、写真集に『うらうへ』(冬青社・10年)、『Free radical』(iPad専用フォトアプリ App store・12年)、雑誌掲載に「佐鳴湖日記」(フォトコンテスト・05年10月号)、「うらうへ」(日本カメラ・10年3月号)、「Free radical」(アサヒカメラ・12年11月号)、同(ニッコール年鑑2011-2012)などがある。
作者Webサイト http://www.emi-ichikawa.com/
写真展内容
米国在住の作者は、2005年に出版された前作「ホームドラマ」シリーズで、人々が出会い、子どもが生まれて家族を作るプロセスを、身近な人たちの結婚、出産に寄り添って記録した。そこには当事者にはないアウトサイダーの視線があった。
その後自身の娘の誕生を機に、家族を築くために最適な場所を求めて、ニューヨークからマウイ島、東京、熊本、上海、サンタモニカと彷徨し、南カルフォルニアの海辺の街にたどり着く。新しい土地で一度の流産と一度の死産を経験し、作者は写真を撮ることを通して衝撃的な非日常を見つめ、その意味を探ってきた。
本展は、2004年から2014年までに撮影されたもので、長い旅の間に出会った人々、家族や友人、そして作者の記憶の断片を集めたものであり、日常のなかで繰り返されるささやかな願いや懐かしい記憶をよびさます作品群である。カラー40点。
作者のプロフィール
守田 衣利(モリタ エリ)
熊本県生まれ。フェリス女学院大学文学部英米文学科卒業。International Center of Photography(米国ニューヨーク)ジェネラルスタディース科修了。1998年第7回写真新世紀優秀賞受賞。2004年新風舎平間至写真賞大賞受賞。05年Photo District News「PDN’s 30」他受賞多数。
主な写真展に、01年「Home Drama」(二人展・PS122Gallery/ニューヨーク)、04年同展(個展・SOHO Photo Gallery)のほか、グループ展に、99年「Surface Tension」(Art In General/ニューヨーク)、00年「Self in Situation」(Museum of Youth/ロシア連邦エカテリンブルク)、02年「Futuring Power 写真新世紀十周年記念展」(東京都写真美術館)、05年「Water」(The Center for Contemporary Art Santa Fe/米国ニューメキシコ)、10年「Home」(IVC Gallery/米国カリフォルニア)、11年「ワールドワイド@ヤングポートフォリオ」(清里フォトアートミュージアム)、14年「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など参加多数。
なお作品は、Joy of Giving Inc.(ニューヨーク)、清里フォトアートミュージアム、Milwaukee Museum of Art(米国ウィスコンシン)他に所蔵されており、写真集に『ホームドラマ』(新風舎刊・05年)がある。
作者Webサイト http://www.erimorita.com/
写真展内容
東京からインドへ逃避する作者。デリー、ムンバイ、コルカタ、バラナシそしてダージリンと旅を続ける。
作者にとってインドは、「逃避できた場所」ただそれだけである。人や様々な思考、言語、宗教であふれかえる土地。もっとも重要なのはこんなにもたやすく道に迷い、再び呼吸をはじめることのできる場所であること。そして、再びにおいを嗅ぐことができる場所であり、歩んできた畦道をまた思い出すことのできる場所であることだ。
本展で展示する作品は作者のラブレターであり、すべての人間の心の奥底に沈んでいる遠く幽かな思い出に寄せた頌歌である。
忘れかけていた人間の根源を感じようとする欲望や、真の意味、本当の目的を見つけることへの渇望を表現した作品を展示する。
作者のプロフィール
Russell Scott Peagler(ラッセル スコット ピーグラー)
1980年米国サウスカロライナ州生まれ。同州立ランダー大学にて英文学科学位号を取得後、トロイ州立大学政策科学国際政治学科にて修士号を取得。2003年来日後、上智大学にて日本語を専攻。作品は、これまで「日本カメラ」ほか米国芸術誌5誌に掲載されており、写真展も、銀座ニコンサロン、東京都写真美術館内シャンブル・クレール、Whitehouse & Co. ギャラリー(東京都文京区)、Cafe Works Luftig、Jazz喫茶、映画館、モサントギャラリー(米国)などで多数開催している。現在日本在住。
作者Webサイト http://www.therealrsp.com/