小林 紀晴写真展
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kemonomichi
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6/27 (木)
~7/3 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
千数百年前から続いている御柱祭は七年に一度だけ行われる。昭和十九年、戦争のさなかにも、それは行われた。
春の神事、御頭祭では古くから、七十五頭の鹿の首が生け贄として捧げられる。作者は初めて目にしたとき、御柱祭のことを思い出さずにはいられなかった。
木落とし坂では、柱の上に人を乗せたまま、急坂を転げ落ちる。作者の父も祖父も乗った。作者は幼い頃から、その姿を七年ごとに目にした。柱に乗った誰もが、何かが憑いたような、形相をしていた。心底、恐ろしかった。
巨大な獣と化した柱が一旦滑り出したら、もう誰にも止められない。男たちの身体を見つめることしかできない。
ときに柱は荒ぶれ、人をふり落とし、血が流れることもある。生け贄のごとく、神が望むことなのだろうか。あとには御柱の軌跡がくっきりと残る。それは猪だけがゆく道、ウジによく似ていた。
出雲から諏訪に神がやって来る以前、ミシャグチという土着の神が存在していた。さかのぼれば縄文文化が繁栄していた。
出雲からの神、ミチャグチ、縄文。この三つが諏訪湖と、屏風のように立ちはだかる八ヶ岳のあいだで、いまも蠢いている。けっして過去のものではない。ときに、それらの力をひしひしと感じる。
何かをきっかけに、日常を乗り越え、忽然と姿を現し、ひとつになる。その瞬間を、作者は待つ。やがて、目の前に、容易には見えなかった一筋の道があらわれる。作者はその奥へ、深く分け入ってみた。カラー約30点・モノクロ約20点。
作者のプロフィール
小林 紀晴(コバヤシ キセイ)
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期学部写真科卒業後、新聞社にカメラマンとして入社。91年独立。95年「ASIAN JAPANEASE」でデビュー。アジアを多く旅する。97年「DAYS ASIA」で日本写真協会新人賞受賞。2000-02年渡米(N.Y.)『homeland』『days new york』『SUWA』『はなはねに』などの写真集や『父の感触』『十七歳』などの著書も多数。最新作に『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』(集英社刊)がある。なお本写真展と同時に同名写真集『kemonomichi』(冬青社)刊行予定。
内山 英明写真展
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アトムワールド ATOM WORLD
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7/4 (木)
~7/10 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
ここに掲げられた写真のすべては、原子力に関連する実験所や研究施設ばかりである。その要塞のように地中にそびえるメタリカルな光景に衝撃を受けたのが、撮影の動機だった。3.11の東日本大震災以前より、日本の最先端のそんな実験所を撮り続けてきた。
――ウランを燃料とする原子炉発電の実験所
――海水から重水素などを取りだし核融合反応を起こさせ、莫大なエネルギーを作る核融合実験施設
――光速で加速されたビームで物質に衝撃を与え、科学や医療の分野で貢献を果たしてきた加速器研究施設
――自然のニュートリノ素粒子と原子力施設で作られた素粒子を合わせて共にキャッチし、観測をしている宇宙観測施設
――原子力発電所の“核のゴミ”を保管する中間貯蔵機関と、地層処分に10万年も要する研究貯蔵施設
原子力実験場の底につらなり輝く巨大マシーン、今日では科学の力は我々の生活圏にとっても絶大だが、ときとしてそのリスクも凄まじく強大だ。施設内の限りない機能美あふれる世界も、それを思うと生々しいリアルな光景として迫ってくる。カラー50点。
作者のプロフィール
内山 英明(ウチヤマ ヒデアキ)
1948年静岡県生まれ。76年東京綜合写真専門学校中退後、週刊誌や月刊誌でドキュメント写真を次々と発表後、アジアや欧州の都市を回る。92年日本で初めてエイズ発症を公開した平田豊氏の撮影と支援を行う。その後、「TOKYO」をテーマに意欲的な作品を発表。また、都市と並行して日本の地下の撮影を開始する。2000年第25回伊奈信男賞受賞。06年日本写真協会年度賞受賞。06年第25回土門拳賞受賞。
写真展は、個展、グループ展など現在までニコンサロン、美術館を中心に多数開催。
主な写真集に、89年『島国へ帰る』『等身大の青春~俵万智』、93年『都市は浮遊する』、94年『いつか晴れた海で~エイズと平田豊の道程』、2000年~08年「JAPAN UNDERGROUND」1~4、03年「東京デーモン」、06年「トウキョウ・アンダー」、07年「東京エデン」などがある。
安掛 正仁写真展
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蛞蝓草子
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7/11 (木)
~7/17 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
何でもないような日常でも、とある瞬間に「ふっ」と、何か別の世界にでも入り込んでしまったかのような気がする時がある。そんな時に見える世界は、楽しくもあったり、恐ろしくもあったり、さびしくもあったり、いろいろな世界だ。
それは昔、子供のころに学校で友達と怖い話に夢中になった後、気づくと自分の回りの世界がすべて変わって見えてしまった時のような、オモシロく、不思議で、コワい感じといえばいいかもしれない。作者にはそんな感覚がゾクゾクした肌触りを伴って今でもパッと蘇る。子供のころに置いてきたと思っていたこの刺激的な出会いに、作者はワクワク、ソワソワしている。それらは場所も、時間も関係ないかのような世界だが、作者が作り出した物語りではなく、作者が見て体験した世界なのである。モノクロ約30点。
作者のプロフィール
安掛 正仁(アガケ マサヒト)
1969年東京生まれ。90年代初めより写真を撮りはじめる。2008年写真誌「アスファルト」1号に参加。09年サードディストリクトギャラリーに立ち上げより参加。個展を中心に活動し、現在に至る。
主な写真展に、「霰弾」(蒼穹舎)、「ずんべらぼう」「蛞蝓草紙」シリーズ(以上サードディストリクトギャラリー)など多数。
菊池 東太写真展
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白亜紀の海 2
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7/18 (木)
~7/24 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
この北アメリカの自然をテーマにした写真展は、2004年に「DESERTSCAPE」として発表以来、今度で5回目になる。この間作者は、アメリカ合衆国に10回撮影に行き、10万キロあまり走破した。9回目までは4×5サイズのポジカラーフィルムで撮り、最後の昨年(2012年)3月の撮影からはすべてデジタルカメラに変更した。
登場する風景はすべてミシシッピ川の西にある。東部にも何度も行ったが、東と西では明らかに別世界で、東は湿度が高く、緑も豊富。西はその逆で、ドライで岩がゴツゴツして緑は疎らだ。夏には湿度が10%をきることもたびたびある。そのドライな乾き切った自然、風景がなんとも新鮮だ。
あるとき作者は、撮った景色のほとんどが石灰石であることに気づいた。石灰石ということは、海だったのである。
1億3500万年前から6600万年前、つまり白亜紀の時代に北米大陸は東西2つに分かれ、その間は数百キロ幅の広い海路になっていた。その海路がたびたびの地殻変動によって隆起し、北米大陸は一つの大陸としてつながり、徐々に現在の地形になってきたのだ。
当初は意識していなかったが、作者が今まで撮ってきた風景は、ほんの一部を除いて大半が隆起した大地で、かつては海の底にあった地形だということなのだ。
100㎝×80㎝ 20点。
作者のプロフィール
菊池 東太(キクチ トウタ)
1943年大阪生まれ。出版社勤務の後、フリーランスで活動。日本写真家協会会員。2012年日本写真芸術専門学校講師退任。同年7月日本カメラ財団菊池東太写真塾講師。
写真展に、81年「砂漠のひとびと」(ミノルタ・フォトスペース)、87年「二千日回峰行」(そごうデパート)、94年「木造モルタル二階建て」、95年「アメリカンウエスト~ミシシッピの西」、97年「ヤタヘェ 北米最大の先住民、ナバホの20年」(以上コニカプラザ)、04年「足尾」(銀座ニコンサロン)、「DESERTSCAPE」、06年「WATERSCAPE」(以上コニカミノルタ・プラザ)、09年「白亜紀の海」(銀座ニコンサロン)、「DESERTSCAPE2」(コニカミノルタ・プラザ)などがあり、写真集に『ヤタヘェ~ナバホ・インディアン保留地から』(佼成出版社)、『ジェロニモ追跡』(草思社)、『大地とともに』(共著。小峰書店)、『パウワウ アメリカ・インディアンの世界』(新潮社)、『「アメリカ」ワールド・カルチャーガイド⑮』(トラベルジャーナル)などがある。
吉原 かおり写真展
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サヨナラと香辛料
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7/25 (木)
~7/31 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
作者は中学、高校と周囲の人間となじめず、学校に行かなかった時期がある。
それから5年後、小さな個室とそのとなりに共同スペースとしてキッチン、リビングルームなどがあったゲストハウス「カプセルアパート」に住むことになった。
たくさんの知らない人たちと同じ屋根の下に住んでいるということだけで、どこから来たのかも知らなかった人たちとの間で、居心地の良い距離感があったことを覚えている。
プライベートな場所である個室のなかで、写真を撮らせてもらった。そのことがその人をもっと知るためのひとつのアプローチになっていた。
写真の面白さと同時に人に興味を持ち始め、このことが内向きだった作者が外へと向かうきっかけとなった。
写真と人とが自身の世界を広げていく。
自分と何か共有できるものがあるかもしれないという思いから、今までは苦手だった同世代の人たちに声をかけるようになった。
「カプセルアパート」と同じように、部屋の物もその人自身であるかのように、写真を撮らせてもらうようになった。
しかし、写真があればどこかで通じ合えるという思いは思い込みでしかなく、自分に足りないものを満たしてくれるものでもなく、自己を投影するものでもなかった。
結局は写真を使い、他者を見ることで自分を知りたかったのだ。
作者は何が撮りたいというわけではなく、写真を撮る理由を探していた。ただ、写真を撮らないと前に進めない気がして、写真を撮り続けている。
人との出会いも別れも、そして写真も、作者にとっては人生のスパイスになっている。
カラー10点。
作者のプロフィール
吉原 かおり(ヨシハラ カオリ)
1980年兵庫県生まれ。2011年三木淳賞奨励賞受賞。
主な写真展に、03年「カプセル アパート」(PLACE M/東京)、07年同展(Juna21新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、08~09年7回連続展「吉原十景」(PLACE M/東京)、10年「晴天乱気流」(TAP/東京)、「カプセル アパート」写真集出版記念展(TAP・PLACE M/東京)、11年連続展「#1」「#2」「#3」(TAP/東京)、「よびみず」(Juna21新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)12年「potion」「×××」「ruru」(TAP/東京)がある。
写真集に10年『カプセル アパート』、12年『よびみず』(以上TAP刊)があり、12年写真集出版レーベル『Plump WorM factory』を立ち上げる。