写真展内容
作者にとって言葉で言い表せない感情をもたらす光景に出合うことがあるという。そのとき、意識作用の生起と消失との境界に立ち、そこに潜むものを写真に捉えようとしている。
モノクロ40点。
作者のプロフィール
荒川 拓大(アラカワ タクヒロ)
1965年静岡県生まれ。2009年渡部さとる氏のワークショップ2Bに参加。10年より白岡順氏のワークショップ講評講座を受講中。
作者にとって言葉で言い表せない感情をもたらす光景に出合うことがあるという。そのとき、意識作用の生起と消失との境界に立ち、そこに潜むものを写真に捉えようとしている。
モノクロ40点。
荒川 拓大(アラカワ タクヒロ)
1965年静岡県生まれ。2009年渡部さとる氏のワークショップ2Bに参加。10年より白岡順氏のワークショップ講評講座を受講中。
千数百年前から続いている御柱祭は七年に一度だけ行われる。昭和十九年、戦争のさなかにも、それは行われた。
春の神事、御頭祭では古くから、七十五頭の鹿の首が生け贄として捧げられる。作者は初めて目にしたとき、御柱祭のことを思い出さずにはいられなかった。
木落とし坂では、柱の上に人を乗せたまま、急坂を転げ落ちる。作者の父も祖父も乗った。作者は幼い頃から、その姿を七年ごとに目にした。柱に乗った誰もが、何かが憑いたような、形相をしていた。心底、恐ろしかった。
巨大な獣と化した柱が一旦滑り出したら、もう誰にも止められない。男たちの身体を見つめることしかできない。
ときに柱は荒ぶれ、人をふり落とし、血が流れることもある。生け贄のごとく、神が望むことなのだろうか。あとには御柱の軌跡がくっきりと残る。それは猪だけがゆく道、ウジによく似ていた。
出雲から諏訪に神がやって来る以前、ミシャグチという土着の神が存在していた。さかのぼれば縄文文化が繁栄していた。
出雲からの神、ミチャグチ、縄文。この三つが諏訪湖と、屏風のように立ちはだかる八ヶ岳のあいだで、いまも蠢いている。けっして過去のものではない。ときに、それらの力をひしひしと感じる。
何かをきっかけに、日常を乗り越え、忽然と姿を現し、ひとつになる。その瞬間を、作者は待つ。やがて、目の前に、容易には見えなかった一筋の道があらわれる。作者はその奥へ、深く分け入ってみた。カラー約30・モノクロ約20点。
小林 紀晴(コバヤシ キセイ)
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期学部写真科卒業後、新聞社にカメラマンとして入社。91年独立。95年「ASIAN JAPANEASE」でデビュー。アジアを多く旅する。97年「DAYS ASIA」で日本写真協会新人賞受賞。2000-02年渡米(N.Y.)『homeland』『days new york』『SUWA』『はなはねに』などの写真集や『父の感触』『十七歳』などの著書も多数。最新作に『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』(集英社刊)がある。なお本写真展と同時に同名写真集『kemonomichi』(冬青社)刊行予定。
2011年3月11日14時46分頃に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)に伴う大津波は三陸沿岸の町々に甚大な被害を与え、その風景を一変させた。この地域はリアス式海岸であるため過去に何度も津波による被害を受け、そのたびに変貌と復興を繰り返してきている。
本展では、作者の故郷・岩手県釜石市の被災前の光景(モノクロ)と現在(カラー)とを一対にし、その変貌の様子を展示する。このカラー写真は2012年8月に撮影したもので、約1年半の歳月を経て瓦礫は撤去され、街中は櫛の歯が抜けるように更地化していった。
街中から瓦礫は消えたが、他の場所に集められただけで、その処分も課題が多い。同様に復興計画の青写真は見えてきたが、最終決定するまでには至っていない。ましてや復興したと言えるには相当の年月が必要だ。つまり、いまはまだ復興へのスタートラインに立ったばかりとも言える。
これが、ともすると忘れ去られがちな被災地の現状である。決して他人事ではない。作者は、これらの写真を通してそれぞれの故郷を想い、考える機会になればと思っている。
カラー19点・モノクロ19点。
佐々木 貴範(ササキ タカノリ)
1967年岩手県釜石市生まれ。4歳まで過ごす。91年東海大学大学院工学研究科修了後、日本高速通信株式会社(現・KDDI)に入社。97年退職後、日本写真芸術専門学校入学。99年同校卒業。写真家樋口健二氏に師事。現在、「東北」「釜石」「家族(絆)」「表現者」などをテーマに、フリーランスとして活動している。釜石応援ふるさと大使、日本写真家協会会員。
主な写真展に、2002年「消えゆく光景・釜石橋上市場」(シープラザ釜石)、05年「海の神・山の神―三陸釜石の祭り―」(オリンパスギャラリー)、09年「鉄の町・釜石」(アイデムフォトギャラリー・シリウス)、12年「釜石呑ん兵衛横町―3.11復興へ―」(ペンタックスフォーラム)、その他グループ展、作品寄稿多数。また、写真集に『釜石橋上市場―追憶の光景』(無明舎出版・07年)がある。