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大阪ニコンサロン 2011年6月

大阪写真月間2011

写真
写真家150人の一坪展
5/26 (木) ~6/1 (水)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展の内容

写真文化の発展と普及に寄与することを目的に、毎年6月1日の「写真の日」を中心とした期間に東京と大阪で開催されるのが「写真月間」である。
「大阪写真月間」は2000年の暮れに「東京写真月間」(日本写真協会主催)の呼びかけに応じてスタートし、02年6月に初めて「大阪写真月間2002」を開催した。
今年の「大阪写真月間2011」は10年目となり、本年も大阪市内のギャラリー5カ所を使い、写真家約150人が一人一坪(1.8m四方)を使って展示する「写真家150人の一坪展」と、一般の写真愛好家1000人が1人1枚を展示する「私のこの一枚・1000人の写真展」の二つの写真展のほか、高校生による「ハイスクール・フォトアワード」、「小学生のための写真教室」や記念シンポジウムなどを併催する。
メインイベントである本展の特色は、写真を表現手段として作品を制作している人なら、作品内容や方法はもちろんのこと、年齢、性別、国籍、職業などに関係なく参加できるところにある。また、展示するギャラリーや壁面の場所も抽選で決定するので、いっさいの審査や選別は行わない。写真展にポリシーやテーマを求める人は、この何でもありの写真展に「展としてのポリシーがない」という異論を唱えることもあるが、80歳を超える超ベテラン作品の横に、孫のような18歳がはじけるような写真を並べる、そんなお好み焼き的「ごちゃ混ぜ感」が本展の魅力である。
この「写真家150人の一坪展」では、観客は内容も方法も異なる150の写真表現作品に出会うことになり、150の個性の中に、きっと気に入る作品があるはずである。

第30回土門拳賞受賞作品展
石川 直樹

写真
コロナ
6/2 (木) ~6/15 (水)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

南太平洋のポリネシア・トライアングルと呼ばれる広大な海域に住む同種の言語と共通の文化を有する海洋民を、10年間にわたって追った旅の一区切りとなった作品である。
前作の、極東の島々の連なりの一つとしての視点から日本をとらえ直した『ARCHIPELAGO』に続き、海によって柔らかに繋がるポリネシアの小さな島々にも有機的なネットワークを持ちうること、強大な一つの中央ではなく無数の中心が共存する新しい世界のあり方を模索した作品である。また、島々の自然や人々の暮らし、なにげないしぐさを捉えており、動植物や気象に精通し、多様な自然情報を生きた知恵に変換する身体技法を身につけていた先人たちを彷彿とさせる。

受賞理由

石川直樹は、2000年代になって台頭してきた新進気鋭の写真家である。受賞作の写真集「CORONA」というタイトルは、2010年7月11日、石川がポリネシアのマンガイア島で見た皆既日食に由来する。しかし、この写真集には皆既日食のコロナの写真はどこにもでてこない。
石川は、この10年ほど、ポリネシア・トライアングルとよばれる太平洋の島々を巡り、この写真集にまとめた。ポリネシア・トライアングルとは、北限はハワイ、南東はイースター島、南西のニュージーランドにいたる太平洋の三角圏で、ヨーロッパの3倍もの面積があり、8000を超える島々がある。この広大な地域には、同種の言語をもつ海洋民による共通の文化圏が広がる。それは実際の国境で分断された国家ではなく、いわば自然発生的にできた“視(み)えない国家”とでもいうべき世界だ。
写真集は、ヌクヒバ島の聖地・天に屹立(きつりつ)する神秘的な巨大な岩体、大地から湧出(ゆうしゅつ)した地霊のような石像ティキ、黒潮の大マグロ、海洋民を象徴する刺青……。まるで神話的な時間軸を遡(さかのぼ)り、ポリネシア文化の根源的世界に突き進むのかと思うと、壁に張られたクリスマス島でおこなわれたアメリカの水爆実験の古びた新聞、日本語が書かれたままの中古車に乗るおばさん、子どもから老人まで多くの人々や風景が生き生きと写されている。
写真集の「あとがき」によると、皆既日食が起こった瞬間、太陽と重なった黒い月のまわりのコロナがまるで生き物のように蠢(うごめ)き、巨大な眼球が天空から地上を見下ろしているかのように感じたという。そして「あの一瞬、自分が見つめ、一方で見つめ返されたその先にあるものが、もしかしたら本当の世界かもしれない」と記している。写す人間と写されるモノの視線が重なった時、その奥に本質が視えてくる……。これは石川直樹という写真家の本質を知る上で重要な言葉だ。
石川の一連の仕事をみると、二つの異なる眼を使って写真を撮っているように思われる。一つは文化人類学をベースにして、宇宙から地球を視るような知的で無限大の眼。もう一つは現場に行って土地の襞々(ひだひだ)に入ってゆく動物的で至近距離の眼だ。
こうして彼が一貫して追ってきたのは、権力が造った国家や文化ではなく、“視えない国家”だった。
前著「ARCHIPELAGO」では、日本列島の中心は避け、南北に点在する群島を追った。その結果、南の端の台湾・金門島では中国、北のサハリンではロシア、クイーンシャーロット島ではカナダとアメリカ……。群島の“視えない国家”の背後から、不気味な姿を現したのは、巨大な国家だった。
“視えない国家”を追い続けてきた石川直樹の心の中に、いま、ブラックホールのように「日本」という国家が浮上してきているのではなかろうか。今後の石川の仕事に注目したい。(内藤正敏)

作者のプロフィール

1977年東京生まれ。2000年Pole to Poleプロジェクトの参加して北極から南極を人力踏破。01年7大陸最高峰登頂を最年少(当時)で達成。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。06年「さがみはら写真新人奨励賞」、「ニコンサロン三木淳賞」、10年『ARCHIPELAGO』(集英社刊)で「さがみはら写真賞」受賞。
著書・写真集に、『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風』(中央公論新社)、『THE VOID』(ニーハイメディアジャパン)、『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)、『この地球を受け継ぐ者へ』(講談社+α文庫)、『大地という名の食卓』(数研出版)、『全ての装備を知恵に置き換えること』(晶文社)、『いま生きているという冒険』(理論社)などがある。

juna21 馬場 智行

写真
Acryl
6/16 (木) ~6/22 (水)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

人類の科学は様々な問題を、不可能を可能にすることによって解消してきた。私たちの生活は自らが作り出してきた様々な技術の恩恵を受けていて、それらの一部には体外受精やクローンという、生命の存在意義に関わる技術がある。文化とあくなき向上心が、人間の真髄と言えるかもしれない。しかし、それによってもたらされるものは、人間を生物たらしめていることを奪うかもしれない。
作者は水族館の生物を人間の行く末、あるいは現在の姿を暗示するモチーフとしている。
水族館の生物と海に生きる同生物との一番の違いは、生存競争に身を置かないということだろう。そのことが両者の生き方を大きく分けている。水族館には人口の波や岩、そして人間がある。これらの生き物は、人間の生み出した技術に囲まれ、育まれている。姿形は海に生きるそれと何ら変わりないが、別の存在になりつつあるのかもしれない。
数十センチのアクリル壁一枚を隔てた場所に存在するその姿は、あたかも自然の摂理から逸脱した人間のようである。モノクロ約30点。

作者のプロフィール

1981年生まれ。2003年天理大学文学部歴史文化学科考古学専攻卒業。08年日本写真芸術専門学校写真科1部3年制フォトアートコース入学。10年GAW展Ⅶ「路地から路地へ in 西脇」に参加。

juna21 藤原 拓也

写真
スポーツ絵巻物
6/23 (木) ~6/29 (水)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

作者はアジア各地のスポーツ競技の現場を歩いてきた。
巨大なスタジアムや体育館でプレーする選手たちの姿から、格闘技道場で体を鍛える人々、高速道路のわきの空き地、路地裏の公園などでスポーツを楽しむ住民や子どもたちなどさまざまである。
競技に夢中になっている人々のわきを、牛がのんびりと歩いて行く場面に出会ったこともあった。カンボジアのトンレサップ湖では、ボートの上に造られた移動式バレーコートで、中学生がひもをネットがわりにバレーに興じていた。
今の日本では公園でキャッチボールも自由に出来なくなってしまったが、作者は、アジアの人々にとってスポーツ競技が日常生活に深く根付いていることを実感した。アジアの各地でスポーツ競技は、人々の人生の中にとけ込んでいるのである。
日常のなかで、スポーツと出会った瞬間の作品である。カラー13点。

作者のプロフィール

1987年生まれ。2010年日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークコース飯塚ゼミ卒業。11年4月より婚礼写真「美光写苑」勤務。

関岡 昭介

写真
muddy water
6/30 (木) ~7/6 (水)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

小説『泥の河』の舞台となった端建蔵橋(ハタテクラハシ)。ここで二つの川は合流して安治川と名が変わり、天保山で一気に大河となる。
この辺りから天保山の彼方を望むと、大橋や鉄橋の重なりが淡いブルーのシルエットになり、海からの風と川を下る風がぶつかり合って水蒸気を発生させ、海を感じさせる。
水辺をひたすら歩いていると、時代錯誤を覚えることがある。町も人々も、自分までもがどの時代を歩いているのか。
生きる中の無の安らぎ。死もまた安らぎの中にあると祈りたい。
本展は、1982年の写真展「泥の河」(モノクロ作品)の続編としてカラーで取り組んだ作品展で、作者のできるだけ対象に寄り添いたい思いが、象徴的な表現を選択させる。
「muddy water」の物語は、岸辺に寄せる波の泡(アブク)のように消えては現れて、止まることは無い。カラー50点。

作者のプロフィール

1928年大阪市生まれ。58年浪華写真倶楽部入会。
主な写真展(個展)に、74年「白い抒情」(銀座ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、75年「気になる光景」(新宿ニコンサロン)、77年「大阪環状線 駅からの眺め」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、82年「泥の河」(銀座ニコンサロン)、88年「海風前線」(新宿ニコンサロン)、92年「大阪まんだら」(銀座ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、97年「青春風来」(大阪ニコンサロン)、99年「LIVE大阪 ’97 ’98」(銀座ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、2005年「大阪三昧 まんじ」(新宿コニカミノルタプラザ)などがある。
08年、東京都写真美術館に、作品8点収蔵。

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