中村 治
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3/22 (火)
~4/4 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
故郷を失うことは、自分を失うことなのだろうか。
中国南東の山間部に異様な建物が点在するエリアがある。外界を拒絶するようにそびえる土壁。一歩足を踏み入れれば100部屋はあろうかというほどの猥雑な集合住宅が現れる。
黄河中下流域から戦乱を逃れてきた「客家人(はっかじん)」たちのこの住処は客家土楼と呼ばれ、世界遺産にも登録される歴史的建造物だ。
1700年もの歴史を刻むこの建築群には老人の姿が目立つ。中国の発展は、人里離れたこの山間にとっても他人事ではない。都市部へと出稼ぎに行き、都会の生活に浸った若者たちは、もう客家土楼に戻ってこない。主をなくした住処は、中国の成長と反比例するように急速に荒廃しはじめている。
進化とは、時に物質的な犠牲をともなうのかもしれない。しかし、歴史が年輪に刻まれるように、受け継がれなければならないものもあるはずだ。それこそが、今のわれわれ自身を形づくるものなのかもしれない。
作者はその思いを本展のタイトルに込め、世界遺産「客家土楼」と、そこに今なお住み続ける人々を撮影し続けた。
古代中国の王族の末裔として華僑の1/3を占めるともいわれる客家人。消えゆく住処に彼らは何を思うのだろうか。そして、私たちに何を語りかけるのだろうか。カラー45点。
作者のプロフィール
1971年生まれ。成蹊大学文学部文化学科卒。ロイター通信社北京支局にて契約カメラマン、雑誌社カメラマン、鳥居正夫氏アシスタントを経て、01~05年写真家坂田栄一郎氏に師事。06年独立し、現在フリーランスで活動中。
藤原 拓也
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スポーツ絵巻物
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4/5 (火)
~4/11 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
作者はアジア各地のスポーツ競技の現場を歩いてきた。
巨大なスタジアムや体育館でプレーする選手たちの姿から、格闘技道場で体を鍛える人々、高速道路のわきの空き地、路地裏の公園などでスポーツを楽しむ住民や子どもたちなどさまざまである。
競技に夢中になっている人々のわきを、牛がのんびりと歩いて行く場面に出会ったこともあった。カンボジアのトンレサップ湖では、ボートの上に造られた移動式バレーコートで、中学生がひもをネットがわりにバレーに興じていた。
今の日本では公園でキャッチボールも自由に出来なくなってしまったが、作者は、アジアの人々にとってスポーツ競技が日常生活に深く根付いていることを実感した。アジアの各地でスポーツ競技は、人々の人生の中にとけ込んでいるのである。
日常のなかで、スポーツと出会った瞬間の作品である。カラー13点。
作者のプロフィール
1987年生まれ。2010年日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークコース飯塚ゼミ卒業。11年4月より婚礼写真「美光写苑」勤務。
中筋 純
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黙示録チェルノブイリ 再生の春
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4/12 (火)
~4/25 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
可憐なタンポポの花が咲き乱れ、ヒバリたちは求婚のダンスをしながら空高く舞い上がる。朽ちかけた鉄条網をくぐり抜けてもそこには同じ春があった。
1986年4月。旧ソ連ウクライナ共和国で起こったチェルノブイリ原子力発電所事故。広島型原爆の数百倍もの放射性物質を世界中にまき散らした大惨事から、今年で25年がたつ。いまだに発電所の周囲30キロのエリアは人の立ち入りが制限され、放射能障害で多くの人々が病魔と闘っているものの、皮肉なことに自然は、底知れない回復力でソ連という国家が目指したユートピアの街を徐々に飲み込もうとしている。
20世紀に入って人類は、核というパンドラの箱を開けてしまった。核は人類に膨大なエネルギーを授ける代わりに、刃を向ける二律背反な存在である。核の刃を突きさされ、廃墟となった街は文明の抜け殻のようでもある。そして何事もなかったように、淡い緑の衣をまとう木々たち。この光景は警鐘なのか、それともレクイエムなのか?カラー約40点。
作者のプロフィール
1966年生まれ。智弁学園和歌山高等学校卒業後、東京外国語大学中国語学科に入学。同大学卒業後出版社勤務中に独学で写真技術を習得。96年独立。ストリートファッション誌で活躍する傍ら、全国各地の廃墟を撮り続けている。
渡辺 直翔
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降る
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4/26 (火)
~5/2 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休
写真展内容
作者が小学生だった頃に流行った、上空を通過していくヘリコプターに手を振ると爆弾を落とされるという噂から制作が始まった。
他愛も無い噂だが、目に見える何気ない日常のなかに凄惨な世界が潜んでいるかもしれないというネガティブな想像は、今もどこかでおこっている戦争や、人の無残な死を考えれば、決して子どもの空想だけにとどまらないはずだ。
轟音を立てながら頭の上を通るヘリコプターや戦闘機は、基地から近い住民にとってすでに日常となっている。誰も見上げることさえしない。しかし、ちいさな子どもだけはしっかりとその存在を確認している。これはいったい何者なのだろうかと。日常に侵入する異物を見つめる。
穏やかな日常の光景に目を向けつつ、その先に広がる世界を表現しようとしている。
カラー約16点。
作者のプロフィール
1988年北海道伊達市生まれ。2011年武蔵野美術大学造形学部映像学科写真コース(小林のりおゼミ)卒業。
主な写真展(グループ展)に、08年第7回サッポロ未来展(札幌)、「miraiten」(金沢)、「GEISAI #11」(東京)、「Photography after digitalization 展」(武蔵野美術大学共同研究)、09年第8回サッポロ未来展(札幌)、「武蔵野美術大学映像学科3年次進級制作展」(東京)、「川口百景2009年度入選50作品展示」(川口市立ギャラリー/埼玉県)、10年「武蔵野美術大学映像学科3年写真コース学外展」(東京)、「GEISAI #14」(東京)、「ライトシアン 小林のりおゼミ展」(東京)、11年「武蔵野美術大学卒業制作展」(東京)などがある。