Nikon Imaging
Japan
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銀座ニコンサロン 2011年4月

澤田 勝行

写真
紀伊国小夜曲
3/30 (水) ~4/12 (火)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

二眼レフカメラにモノクロフィルムを詰め、青春18きっぷを片手に旅を続けて10年が過ぎた。日本各地の様々な街や風景、人々の狭間を風の如く彷徨い歩いてきたが、その中で最も作者の心を惹き付けた場所が紀伊半島であった。
大阪に生まれ育った作者にとって紀伊の海や山、小さな線路の延びる古い街並みは、幼い頃幾度となく連れられた思い出の場所であり、旅の原点でもある。
いつの間にか作者は、幼い頃の旅の残像を手繰り寄せるかのように、紀伊の街を歩いていた。そしてその中で出逢う人々の透明な視線に心を奪われた。
世界遺産登録などで注目を浴びた「聖地」とは一線を画す、普段着の中の紀伊。約6年間にわたる旅の足跡を紡いだ作品を展示する。モノクロ40点。

作者のプロフィール

1982年大阪府生まれ。2004年大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。06年同校大学院芸術制作研究科修士課程修了。その後同校藝術研究所嘱託助手を経て現在フリーランスで活動中。04年「風ノ唄」にて富士フォトサロン新人賞受賞。08年「風の棲む街へ」にてコニカミノルタフォトプレミオ2008入賞。

横澤 進一

写真
煙野
4/13 (水) ~4/26 (火)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

人はそれぞれ自分にしか見えない土地というものを持つのだろうか。
作者はカメラの眼を纏った目つきで海まで60㎞を超えたこの地点から、人の暮らしや人の土地の来し方行く末を見通す。
写したいものは何処にでもあるはずだが、足はいつも同じ方へ向かう。
カラー55点。

作者のプロフィール

1968年東京生まれ。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業。

第30回土門拳賞受賞作品展
石川 直樹

写真
コロナ
4/27 (水) ~5/10 (火)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

南太平洋のポリネシア・トライアングルと呼ばれる広大な海域に住む同種の言語と共通の文化を有する海洋民を、10年間にわたって追った旅の一区切りとなった作品である。
前作の、極東の島々の連なりの一つとしての視点から日本をとらえ直した『ARCHIPELAGO』に続き、海によって柔らかに繋がるポリネシアの小さな島々にも有機的なネットワークを持ちうること、強大な一つの中央ではなく無数の中心が共存する新しい世界のあり方を模索した作品である。また、島々の自然や人々の暮らし、なにげないしぐさを捉えており、動植物や気象に精通し、多様な自然情報を生きた知恵に変換する身体技法を身につけていた先人たちを彷彿とさせる。

受賞理由

石川直樹は、2000年代になって台頭してきた新進気鋭の写真家である。受賞作の写真集「CORONA」というタイトルは、2010年7月11日、石川がポリネシアのマンガイア島で見た皆既日食に由来する。しかし、この写真集には皆既日食のコロナの写真はどこにもでてこない。
石川は、この10年ほど、ポリネシア・トライアングルとよばれる太平洋の島々を巡り、この写真集にまとめた。ポリネシア・トライアングルとは、北限はハワイ、南東はイースター島、南西のニュージーランドにいたる太平洋の三角圏で、ヨーロッパの3倍もの面積があり、8000を超える島々がある。この広大な地域には、同種の言語をもつ海洋民による共通の文化圏が広がる。それは実際の国境で分断された国家ではなく、いわば自然発生的にできた“視(み)えない国家”とでもいうべき世界だ。
写真集は、ヌクヒバ島の聖地・天に屹立(きつりつ)する神秘的な巨大な岩体、大地から湧出(ゆうしゅつ)した地霊のような石像ティキ、黒潮の大マグロ、海洋民を象徴する刺青……。まるで神話的な時間軸を遡(さかのぼ)り、ポリネシア文化の根源的世界に突き進むのかと思うと、壁に張られたクリスマス島でおこなわれたアメリカの水爆実験の古びた新聞、日本語が書かれたままの中古車に乗るおばさん、子どもから老人まで多くの人々や風景が生き生きと写されている。
写真集の「あとがき」によると、皆既日食が起こった瞬間、太陽と重なった黒い月のまわりのコロナがまるで生き物のように蠢(うごめ)き、巨大な眼球が天空から地上を見下ろしているかのように感じたという。そして「あの一瞬、自分が見つめ、一方で見つめ返されたその先にあるものが、もしかしたら本当の世界かもしれない」と記している。写す人間と写されるモノの視線が重なった時、その奥に本質が視えてくる……。これは石川直樹という写真家の本質を知る上で重要な言葉だ。
石川の一連の仕事をみると、二つの異なる眼を使って写真を撮っているように思われる。一つは文化人類学をベースにして、宇宙から地球を視るような知的で無限大の眼。もう一つは現場に行って土地の襞々(ひだひだ)に入ってゆく動物的で至近距離の眼だ。
こうして彼が一貫して追ってきたのは、権力が造った国家や文化ではなく、“視えない国家”だった。
前著「ARCHIPELAGO」では、日本列島の中心は避け、南北に点在する群島を追った。その結果、南の端の台湾・金門島では中国、北のサハリンではロシア、クイーンシャーロット島ではカナダとアメリカ……。群島の“視えない国家”の背後から、不気味な姿を現したのは、巨大な国家だった。
“視えない国家”を追い続けてきた石川直樹の心の中に、いま、ブラックホールのように「日本」という国家が浮上してきているのではなかろうか。今後の石川の仕事に注目したい。(内藤正敏)

作者のプロフィール

1977年東京生まれ。2000年Pole to Poleプロジェクトの参加して北極から南極を人力踏破。01年7大陸最高峰登頂を最年少(当時)で達成。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。06年「さがみはら写真新人奨励賞」、「ニコンサロン三木淳賞」、10年『ARCHIPELAGO』(集英社刊)で「さがみはら写真賞」受賞。
著書・写真集に、『POLE TO POLE 極圏を繋ぐ風』(中央公論新社)、『THE VOID』(ニーハイメディアジャパン)、『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)、『この地球を受け継ぐ者へ』(講談社+α文庫)、『大地という名の食卓』(数研出版)、『全ての装備を知恵に置き換えること』(晶文社)、『いま生きているという冒険』(理論社)などがある。

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