ニコンサロン企画展
ジョナサン・トーゴヴニク
-
-
ルワンダ ジェノサイドから生まれて
-
1/19 (水)
~2/1 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
1994年、中央アフリカの小国ルワンダでジェノサイド(大量殺害)が起きた。100日間で80万人以上が隣人によって殺されたこの出来事は、20世紀最大の悲劇のひとつとして知られている。その背景には、ベルギーの植民地政策によって煽られた政治的対立があった。ところが当時の国際社会からはほぼ黙殺される結果となった。
じつはその際、大勢の女性が「武器」として性的暴力を受け、約2万人の子供たちが生まれたことは、いまだにほとんど知られていない。ジョナサン・トーゴヴニクはその事実に衝撃を受け、約3年間をかけてそうした境遇で子供を育ててきた女性たちを自らインタビューし、撮影を行なった。本作(原題:Intended Consequences: Rwandan Children Born of Rape)はこれらのポートレート写真とそれぞれの女性のインタビューから構成されている。 トーゴヴニクはさらに、こうした状況下にいる子供たちの中等教育を支援するため「ルワンダ財団」(FoundationRwanda)を設立し、現在も積極的に活動を続けている。
紛争地帯における武器としての性的暴力という問題は、ルワンダに限られたものではなく、今日もなおダルフールやコンゴ民主共和国などで深刻化している。本作はそのような状況を単純化してみせるのではなく、具体的な状況を生きる個人の顔と声と丁寧に対峙することを通じて、現実の複雑な様相を浮かび上がらせようとするものである。
写真集は4ヶ国語版が刊行されており、日本語版も『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』(ジョナサン・トーゴヴニク著、竹内万里子訳、赤々舎)として刊行された。全30点から成る展覧会は現在欧米各地を巡回中であり、ニコンサロンでは企画展としてその一部を展示する。
カラー作品約15点。
作者のプロフィール
1969年イスラエル生まれ。ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアルアーツで写真の学位を取得。以降フリーランスの写真家として活動を始める。2005年に「ニューズウィーク」誌の契約写真家となり、現在ニューヨークの国際写真センターで後進の指導にも当たっている。2007年、ルワンダで撮影した母子のポートレート一点が、ナショナル・ポートレイト・ギャラリーのポートレイト写真賞を受賞。欧米各地で個展、グループ展にも数多く出品し、ヒューストン美術館やフランス国立図書館に作品が収蔵されている。著書にインドの映画産業をドキュメントした写真集『Bollywood Dreams』(Phaidon、2003年)がある。ニューヨーク在住。
濱田 トモミ
-
-
混濁
-
2/2 (水)
~2/15 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
休館:2月5日(土)・6日(日)
写真展内容
作者が子供のころ、冬は家の中で過ごすことが多かった。窓を通して見る冬は、冷たさや汚さを感じなかった。現実を知るすべもなく、ただ、きれいだと思って美しい物語を綴っていた。
大人になったいま、一歩外に踏み出すと、そこには冷たく汚濁した世界が存在している。
作者は、さまざまに変化し、汚れていく雪を見つめながら自己と出会う。切り取られた断片に、光と影、疎外、不安、あるいは楽園を見る。モノクロ37点。
作者のプロフィール
北海道生まれ。2004年写真家渡部さとる氏のワークショップ「WS2B」を受講。以後、自己表現の手段として本格的に写真を始める。現在は写真家白岡順氏のワークショップ「カロタイプ講評講座」を受講中。
個展に、07年「夜を往く」(Roonee247 Photography/東京)、08・09年「滅びるように出逢いたい」(ギャラリー ゑいじう/東京、ギャラリー たぴお/札幌)、10年「夜を往く2010」(フォトギャラリー ウエスト・フォー/札幌)などがあり、主なグループ展に、09・10年東川町国際フォトフェスティバル「インデペンデンス展」(東川町文化ギャラリー/北海道)、10年「MOVE 3」(ギャラリー たぴお/札幌)がある。
糸井 潤
-
-
Cantos Familia
-
2/16 (水)
~3/1 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
昨年、作者の父親が死んだ。家の近所にある森の木にザイルをかけて。
長いあいだ糖尿を煩っていたが、直前の鬱に、家族は気付いていなかった。準備しておいたメモ書きを、財布に差し込んで置き去り、行方をなくした。近所の森で見つけるまで、皆で五晩、四日と捜した。
この経験から、森、の存在が作者にとって大きなものとなった。
フィンランドの光には独特の資質がある。日本の霞がかかった光や、アメリカで見られる硬質な光とも異なる。その地の森にて、地面に落ちた光を見ては、光の筋を、現世とあの世を分ける三途の川のように「隔てるもの」と重ね合わせる。それらをフィルムに焼き付けるために森の中をさまよい、地面に落ちている光を拾い歩く。
デジタル、銀塩の別なく、光と影は「写真」の要素として存在する。光と影、または生と死との狭間に存在する「何か」が、撮影という行為の中、強烈な視覚言語となって現れ、訴えかけてくる。
太陽光が月光に見えることもある森の深い中、場所によって変わる光と影の比率のせいで、昼間なのか、夜なのかという感覚が、時に交錯する。このような経験が、こちら側である現世においての、自身の存在に対する問いかけへとつながる。
「森の概念」は、自分の記憶へと通ずる。記憶への熟考は、常に制作への土台となってきた。そして今、父親の急な死によって、自身と家族との記憶が堰を切って溢れ出てくる。
作者にとって、写真とは詩である。一枚の写真は、ひとつの言葉となりうる。これらの写真は、父と作者、そして家族との対話の中にある言葉でもある。カラー12点。
作者のプロフィール
1971年生まれ。アメリカで12年間の滞在最後の年を、インディアナ大学芸術学部の客員助教授として帰国後、東京にて会社員の傍ら作品制作と発表を続けている。その活動が認められ、文化庁新進芸術家海外研修制度によりフィンランドのラップランド州にて、1年間滞在制作を行う。これまで、海外を含めた30以上の展覧会にて作品が発表され、ヒューストン美術館などに作品が収蔵されている。
写真作品を通して、自我や幼少時の記憶、内なるものと外世界との境界についての出来事を表現しようとしている。生まれ育った日本を離れて、人生の3分の1を異国で過ごした経験が、制作の大きな土台となっている。
現在取り組んでいるプロジェクトは、森の中にある光を、生と死の間にある境界線のメタファーとしてとらえようとしている。自身の父親の急な死がきっかけとなって、日本とフィンランドの、森の中にある光を撮影するようになった。
ギャラリートーク開催のお知らせ
作者の糸井 潤氏によるギャラリートークを下記の通り写真展会場にて開催いたします。
ぜひご参加下さい。
日時:2月26日(土)15:00~16:00
会場:銀座ニコンサロン
※入場無料・予約不要です。当日は直接会場にお越し下さい。