無TARO
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The Long And Winding Road
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11/30 (火)
~12/6 (月)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
子供は大人になるまでに数え切れない矛盾に出くわす。その「なぜ」と、自らの脆く未完成で厄介なくらい鋭い信念の挟間に揺れた時には、他人を傷つけたり、自らを消したりすることから、子供に「だから人間らしい」はない。
社会は子供に少しも優しくないし、そもそも子供に興味などない。自らの経験だけを拠り所とせず、子供の自立とその死まで生きることのできる人格形成を念頭に、日々いとまなく試行を続ける親や家族はどれだけいるのだろう。
本展で作者は、社会生活の手前の大人になること、生きることの難しさを伝えたいと考えている。
カラー41点・モノクロ36点。
作者のプロフィール
無TARO(ムタロウ)
1964年生まれ。中央大学法学部卒。月刊カメラマン誌(77年創刊準備号)を通じて故安西秀行氏に季節、天気、時間、場所ごとの露出やポジの乳剤ごとのテスト等、写真の基礎を教わる。同時に誌上で紹介された当時の荒木経惟氏や森山大道氏、東松照明氏等を知る。荒木氏の「露出やピントがずれていたって小さな伝達ができればいい」や、森山氏の「量のない質はない」等のアドバイスが響く。建築設計、施工の傍ら山村雅昭氏や川内倫子氏等の個展巡りを趣味とする。2001年よりワークショップ曽根塾在籍。
第35回伊奈信男賞受賞作品展
普後 均
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On the circle
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12/7 (火)
~12/20 (月)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
作者の家の近くの空き地に直径4メートルほどの貯水槽がある。上部はコンクリートで覆われていて、近所の人の話では、この防火用の貯水槽は中に水がなく、今は使われていないという。
作者にとって、貯水槽は円形の舞台であり表現の場となる。円形とそこに広がる空間に、移り変わる季節、日常、生きてきた過去、そしてやがて訪れる死を見る。円環する時間と直線的な時間。
ここで、近所の人たち、友人、知的障碍の娘、作者自身、働く人、地域に生きる猫、犬を撮る。火のついた段ボール、木の小舟、ショーケースの魚、ネオン、漂う光を撮る。貯水槽の周りに生い茂った夏草、雨の後の水たまり、降り積もった雪、溶ける雪を撮る。何も手を加えないで撮ることもあれば、思い描いたイメージをサークル上で作り上げて撮ることもある。
それらのイメージは現実の光景でもあり、隠喩が潜む非現実的な光景でもある。そしてそれぞれの作品が呼応しあうことで、不確かな存在である世界が揺らぎつつ立ち現われる。
モノクロ43点。
授賞理由
受賞作「On the circle」は作者の家の近所にあった忘れられた貯水槽を舞台としている。
今はもう使用されていない、4メートルあまりの円形の貯水槽は地下に埋められ、上部が少しだけ地上に出て、コンクリートに覆われていた。その円に惹かれた作者は、そこを舞台に写真を撮るようになる。円とそこに広がる空間に作者は移り行く季節や過ぎ去る時間、今の生活や生きてきた過去、そしてやがて来るだろう死の予兆を見るようになる。家族や近所の人々、友人や知人、猫や犬、燃え上がるダンボールや揺れ騒ぐ風船、木の舟や水槽の魚、生い茂る夏草や降り頻る雪、闇に漂う光や揺らぐ大気…まったく手を加えないで撮る時もあれば、思い描いていたイメージを円の中につくりあげてゆくこともある。直線的な時間と円環の時間、そして螺旋状に上昇する時間が重なり合い、様々なものが共鳴し、不思議なトポスがたちあらわれる。
「On the circle」の円は現実の場所であり、地球上のどこか別の場所であり、その円の上空には広大な宇宙が広がっている。もしその円に生まれた写真が宇宙まで包みこんでしまうような瞬間があるのなら、不安を抱えた不確かな存在である自分が一瞬、救われたような気持ちになるかもしれないと作者は言う。「On the circle」には、円から螺旋によじれながら光を放つ私たちのそのような微かな生の印が写真にしかできない方法で見事に形象化されている。
作者のプロフィール
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1947年神奈川県生まれ。3歳の時から山形県米沢市で育つ。70年日本大学芸術学部写真学科卒業。同年細江英公氏に師事。73年フリーランスの写真家になる。74年パリに住む。77年ニューヨークに住む。
写真展(個展)に、74年「穏やかな日々」(ニエプス美術館/フランス)、75年同展、76年「遊泳」(以上、画廊春秋/銀座)、79年同展(銀座ニコンサロン)、82年「暗転」(フォト・ギャラリー・インターナショナル/虎ノ門、東京)、「遊泳」(フォルムシュタッドパルク/オーストリア)、84年「飛ぶフライパン」(ツァイト・フォト・サロン/東京)、92年「ゲーム オーバー」(パルコ/渋谷、東京)、95年「飛ぶフライパン」(東京都写真美術館)、99年「見る人」、2001年「KAMI/解体」(以上、フォト・ギャラリー・インターナショナル/芝浦、東京)、02年「FLYING FRYING PAN」(prinz/京都)、09年「WRAP TRAP WRAP」(カフェ大好き/東京)、「On the circle」(銀座ニコンサロン)のほか、グループ展に、81年「8x10」(スーザンスピリタスギャラリー/カリフォルニア、アメリカ)、82年「Three Japanese Visions」(フォーカスギャラリー/カリフォルニア、アメリカ)、83年「Japanese Art of Today」(芸術歴史美術館/スイス)、85年「パリ ニューヨーク 東京」(つくば写真美術館/つくば市)、86年「Japanese Photography of Today」(巡回、スペイン)、90年「ポラロイド・スーパーフォト大写真展」(花博国際美術館・国際花と緑の博覧会/大阪)、98年「写真の未来学」(エプサイト/新宿)、99年「日本の現代芸術写真展」(巡回、ドイツ)、01年「現代写真の系譜Ⅱ」(新宿ニコンサロン)、03年「日本大学芸術学部写真学科オリジナルプリントコレクション30周年・写真学科卒業生によるオリジナルプリント新規収蔵作品展」(日本大学芸術学部芸術資料館)、06年「mite!おかやま」(アメリカ・アレナスプロデュース岡山県立美術館)、07年「Japan Caught by Camera-Works from the Photographic Art in Japan」(上海美術館/中国)などがある。
また、著書に、96年「やがてヒトに与えられた時が満ちて……」(池澤夏樹との共著・河出書房新社。07年角川文庫刊)、97年「FLYING FRYING PAN」(写像工房)などがあり、作品は、東京都写真美術館、京都国立近代美術館、北海道釧路芸術館、パリ国立図書館、日本大学芸術学部にコレクションされている。
mk
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悪い血
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12/21 (火)
~12/29 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
“私の人生ははじめから呪われたのに間違いないです。このような運命は一生続いたんです。”(ボードレール)
人間は誰にも現われない普遍的な暴力性を持っている。その根源は交感された対象との関係から始まっている。
関係による暴力性も、結局は自分が関係に影響を及ぼすことができないという無力さと疎外感から表出される。
作者が私的記録を始めた毎瞬間瞬間に無力感と怒りを感じた理由はそこにあった。その怒りは、現在を過去の一定時間に戻してイメージとして拡張されて暴発した。
カラー・モノクロ52点。
作者のプロフィール
1974年ソウル生まれ。2007年ROWAメンバーとして写真家MARU氏に師事。
写真展に、08年「祭りの記憶」(gallery mukta)に参加、10年「1st Ordinary Freak」(gallery lux)に参加、企画展「Elusive butterfly」(gallery 146)などがある。