大阪写真月間2010
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写真家150人の一坪展
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5/27 (木)
~6/2 (水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
写真文化の発展と普及に寄与することを目的に、毎年6月1日の「写真の日」を中心とした期間に東京と大阪で開催されるのが「写真月間」である。
「大阪写真月間」は2000年の暮れに「東京写真月間」(日本写真協会主催)の呼びかけに応じてスタートし、02年6月に初めて「大阪写真月間2002」を開催した。
今年の「大阪写真月間2010」は9年目となり、本年も大阪市内のギャラリー5カ所を使い、写真家約150人が一人一坪(1.8m四方)を使って展示する「写真家150人の一坪展」と、一般の写真愛好家1000人が1人1枚を展示する「私のこの一枚・1000人の写真展」の二つの写真展のほか、高校生による「ハイスクールフォトアワード」、「小学生のための写真教室」や写真集について考える記念シンポジウムなどを併催する。
メインイベントである本展の特色は、写真を表現手段として作品を制作している人なら、作品内容や方法はもちろんのこと、年齢、性別、国籍、職業などに関係なく参加できるところにある。また、展示するギャラリーや壁面の場所も抽選で決定するので、いっさいの審査や選別は行わない。写真展にポリシーやテーマを求める人は、この何でもありの写真展に「展としてのポリシーがない」という異論を唱えることもあるが、80歳を超える超ベテラン作品の横に、孫のような18歳がはじけるような写真を並べる、そんなお好み焼き的「ごちゃ混ぜ感」が本展の魅力である。
この「写真家150人の一坪展」では、観客は内容も方法も異なる150の写真表現作品に出会うことになり、150の個性の中に、きっと気に入る作品があるはずである。その中からニコンサロンでは28名の作家が自信作を展示する。
第29回土門拳賞受賞作品展
鈴木 龍一郎
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RyUlysses(リュリシーズ)
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6/3 (木)
~6/16 (水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会期中無休
写真展内容
作者がアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』の影を追いながら、ダブリンの街を彷徨いつつ、パノラマ・カメラで<死と生の間(あわい)>を記録した作品である。撮影期間は2004年から2009年4月までの6年間で、ダブリンへの渡航をくり返し、撮影した。
サンディコーヴの海岸からリングズエンドを経てダブリン市街へ。オコンネル通りを中心に路地から路地へ。そして、ホース岬からパワーズ・コートへ。往きかうダブリン市民の表情から、壁に広がる落書きや飛ぶ鳥の影まで。作者は歩き回るほどに、無限に連鎖してゆくカオスの世界をシャッターを切っては写真化してゆく。
「塔の前のソバカス少女」「食事する山高帽男」「刑務所の壁」「夕闇のキングズタウン駅」「SM館のある路地」「テンプルバーの花嫁」「海辺に立つ家出少年のポスター」等々、モノクロ・パノラマ作品約40点を展示する。
尚、タイトルの「RyUlysses(リュリシーズ)」は、『ユリシーズ(Ulysses)』に作者の名(Ryu)を組み合わせたものである。
受賞理由
「リュリシーズ」は、アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』の影を追いながらダブリンの街を彷徨い、過去と現在、生と死の境を追い求めた作品。パノラマ・カメラで記録された街の光景は、卓抜なる技術を持ちながら技術主義に陥ることなく、ヨーロッパそのものを浮き上がらせ、作者の写真表現のさらなる深化を具現しており、長年にわたり真摯に写真と取り組んできた精神性が高く評価された。
作者のプロフィール
鈴木 龍一郎(スズキ リュウイチロウ)
1942年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、フリー写真家となり現在に至る。75年「聖印度行」により第12回太陽賞受賞。2008年写真集『オデッセイ』により日本写真協会賞年度賞受賞。日本写真家協会会員。
写真集に、『MOGUS わが友モーガス』(93年小学館・文/C.W.ニコル)、『オデッセイ』(07年平凡社)、『ドルック』(08年平凡社)、『リュリシーズ』(09年平凡社)などがあり、個展を多数開催している。
金川 晋吾
宮崎 勇太
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father
橋の向こうに
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6/17 (木)
~6/23 (水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会期中無休
金川 晋吾展内容
これは作者が父親を撮った作品である。
ある日突然いなくなり、数ヶ月間姿が見えなくなる。そのような「蒸発」を繰り返し続けることで、作者の父は何もない人間になった。財産も、他人との関係性も、自分の考えも、何もない。
何もない人間になること。それはおそらく父自身が望んだことだ。何もない人間になれば、自分のことについても、自分のことを考えてくれる他人についても、考える必要がなくなるのだから。
ある作家が次のようなことを書いていた。
「もし他人のことをほんのわずかでも知ることができるとしたら、それはその他人が自分を知られることを拒まない限りにおいてだ。もし寒いときに、『寒い』と言うことも震えることもしない人間がいたとしたら、私たちはその人間を外から観察するしかない。ただし、その観察から何か意味が見出せるかどうかはまた別の問題だが」
作者は、父親は寒いときに震えることはすると思う。だが、「なぜ震えているのか」と尋ねられても、父親は「わからない」と答えるだろう。本当にわからないのか、それともただ考えたくないのか、それは他人からはわからない。おそらく、本人もわかっていない。カラー40点。
作者のプロフィール
金川 晋吾(カナガワ シンゴ)
1981年京都府生まれ。神戸大学卒業。現在東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程在籍。
宮崎 勇太展内容
作者は鉄道が好きだ。橋脚を真正面から見ると、巨大なオブジェのような感じがする。そして作者の興味は鉄道橋にとどまらず、川に立つ道路、水道、ガス橋と広がっていった。
橋脚にはひとつとして同じ形がなく、さまざまである。橋脚を取り巻く自然環境は、それを建築する際に考慮されているのだろうか? それぞれの形は何を意味しているのか。上流から下流域までいろいろな形状をしたものがあり、見る楽しみのためと思うのは作者、自分だけだろうか。
関東近辺の川に架かるさまざまな橋脚を見に行き、自分の目で確認するようにシャッターを切った。すると当然のこととして、橋脚の向こうにさまざまな風景が見えてきた。モノクロ20点。
作者のプロフィール
宮崎 勇太(ミヤザキ ユウタ)
1988年神奈川県生まれ。2007年神奈川県立向の岡工業高等学校卒業。現在日本写真芸術専門学校在学中。
永冨 恵子
米山 洋平
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引きこもりから社会へ ~ニュースタートの若者たち~
3.141
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6/24 (木)
~6/30 (水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会期中無休
永冨 恵子展内容
作者は、3年間近く関わってきた元ひきこもりやニートの若者たちを撮ってきた。彼らは千葉県にある若者自立支援団体NPO法人ニュースタート事務局の運営する寮の住人、または卒業生である。
彼らの多くは「レンタルお姉さん」「レンタルお兄さん」と呼ばれる訪問スタッフによって家から引き出された人たちだが、籠っていた部屋から寮へ、そして寮を卒業して社会へと一歩一歩ニュースタートを切っていく。しかし日本には、彼らのようにスタートが切れずに引きこもっている若者がまだ100万人もいる。
引きこもりの原因を言い出せばキリがないし、答えも単純ではない。作者は、ただ彼ら一人ひとりを見てもらい、身近なこととして興味を持つきっかけになってもらいたいと願っている。カラー30~35点。
作者のプロフィール
永冨 恵子(ナガトミ ケイコ)
1979年生まれ。神奈川県出身。現代写真研究所第31期生。元レンタルお姉さん。
写真展に、2006年コニカミノルタフォトプレミオ入賞「東京ノラ猫生活」(コニカミノルタプラザ)、09年フジフォトサロン新人賞奨励賞「ニュースタートの若者たち」(富士フォトサロン・東京)がある。
米山 洋平展内容
きっかけは、アジアを旅行している時に現地の人に言われた言葉であった。
「日本の働いている人はロボットみたいだ」
体の中で沸き上がった怒りと、静かな納得がない交ぜになりながら喉の奥からからみつき、作者の頭には、顔のボヤけた表情の読み取れない一人の男がスーツ姿で立っていた。
しかし、すぐに作者は“なぜ自分は怒りと同時に這い上がってきた納得を、あきらめるように受け入れてしまったのだろう”と気になり始めた。
自分の肌で感じなければ何も分かるものか思って「遠い場所」に来ていた作者であったが、実は「近い場所」ではそうすることをやめ、画一的なイメージで、人間への思考をストップさせていた。
本展では、そんな作者が帰国し、写真というものを通して今まで考えることさえおろそかにしていたことへの対峙であり、知らない誰かに話しかけられるという解放感が成したものものであるようにも思われる。カラー約100点。
作者のプロフィール
米山 洋平(ヨネヤマ ヨウヘイ)
1983年生まれ。鹿児島県出身。