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三木淳賞奨励賞受賞作品展
松下 初美展
[松下初美]
インベ カヲリ★展
[倫理社会]
12/9 (火)~12/15 (月)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会期中無休 |
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<松下初美展内容>
作者は、大学3年生の秋ごろ、ほとんどの大学生がそうするように、自身も就職活動を始めた。
説明会に向かう黒い群れがお葬式に、照明写真が遺影に見えたことが、違和感の始まりであった。性格診断テストの練習、良い印象を残す質問の仕方、熱心さをアピールする説明の聞き方など、選考のために有利とされるさまざまなことは、自分の上手な偽り方を教わっているようで、恐ろしくてたまらなかった。それでもみんながきちんとできていることからはみ出してしまう方が、怖かった。
ということで作者は、松下初美をスーツにねじ込み、就活生・松下初美になることにした。その期間、作者は確かに自分であるのに、作者でないみたいであった。 |
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<授賞理由>
受賞作品は、作者である松下初美氏自身の就職活動をテーマにしたものであり、写真展のタイトルもズバリ「松下初美」である。セルフポートレートのみならず、自身の成績表や就職活動のエントリーシートなども展示してしまうなど、その発想の自由さと明るさとが魅力である。
企業の説明会に向かうリクルートスーツの群れがお葬式に思え、証明用の写真が遺影に見えた違和感が始まりであったということだが、いま一歩踏み込んだ写真によるメッセージがあったなら、明るいユーモアを乗り越えて、発想の原点である社会への眼差しや批評性も加味されたのではないだろうか。 |
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<作者のプロフィール>
松下 初美(マツシタ ハツミ)
1985年神奈川県生まれ。2008年法政大学社会学部卒業。06~07年早稲田大学芸術学校専修科在籍。
写真展(個展)に、08年「松下初美」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、「光、群れ」(シアタートラム)があり、グループ展に、07年「わたしたちと私」(PUNCTUM Photo + Graphix Tokyo/東京)、08年「work in Tokyo 浅草」(TEPCO浅草館)などがある。 |
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<インベ カヲリ★展内容>
心の裏表や、さらに隠されたもうひとつの姿だったり、性格の悪さや攻撃性、人に言えない過去、そういった人間の複雑性が好きで撮りつづけた作品である。
「ありのまま……」という言い方があるが、作者はその言葉を信用していない。私服や普段見せる表情は、本人が社会に適合するために演出として使う外見上の主張であって、それが真実とは限らないからである。
撮影中はなるべくそれらを排除し、作者が相手に敬意を払っている部分のみを引っ張り出しているつもりだが、時折失敗するのが写真の面白さでもある。 |
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<授賞理由>
いま私たちが暮らす社会、私たちが生きる時代は、複雑な様相を呈している。孤立を深め、頻発する暗澹たる事件、プライドと倫理観を失った揚句に遍満した危険な食品、混迷する教育現場、さらに混迷を深める政治と金融。作者はこのような時代を生きる同世代の中に、欺瞞や、真実や、心の表裏、独特の倫理観を感じたり発見して、その視覚化を試みた。演出によって撮影された写真は、時にユーモラスであり、時にリアルであり、そして時に考えさせられる。全て成功しているとは言い難いが、失敗を恐れることのない自由闊達なその制作姿勢には、これからの時代を担うだろう可能性が期待される。 |
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<作者のプロフィール>
インベ カヲリ★
1980年東京都生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経て2006年よりフリー。写真・文筆業。05年日本広告写真家協会・APA公募展入選。エプソン・カラーイメージングコンテスト佳作受賞。
写真展に、07年(個展)「倫理社会」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、08年 (グループ展)「VICE PHOTO SHOW」(TOYOTA Scion Space/ロサンゼルス・アメリカ)、「FANTASIA EROTICA JAPONESA」(ARTZ 21/バルセロナ・スペイン)などがある。 |
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