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三木淳賞奨励賞受賞作品展
元木 みゆき
[息の結び目]
Eun-Kyung, SHIN
[Wedding Hall]
12/11 (火)~12/17 (月)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会期中無休 |
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<元木みゆき展内容>
作者が長年撮り続けてきた北海道・牧場一家。ケミカルカメラから機動性の高いデジタルカメラに持ち代えた作者は、まるで呼吸をするようにシャッターを押し、牧場一家の日常を切り取っていく。
牧場一家が織り成す日常は、決して牧歌的な生活や営みだけで成り立っているわけでも自然の風景だけが満ち溢れているわけでもない。機械音がもたらす雑音もあれば、メディアの喧騒、都市的な風景、消費文化に侵された光景もある。むしろ、作者が切り取ってみせた牧場一家の日常は、自然・風土といった地理的空間と文化・社会的空間が重なり、絡み、擦れ合う、現代社会の軋みのようなものである。
考える前に、あるいは考えるスピードを超えて切り取られた光と知覚のざわめき。作者はさまざまな事物や人との出会いのなかで、自らの息遣いとともに、“生のざわめき”のようなシンフォニーを奏でてみせる。 |
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<授賞理由>
作者、元木が長年撮り続けてきた北海道の畜産農家のルポルタージュである。元木は、カメラを手にした座敷童の如く、牧場一家の中を神出鬼没に走り回り、日常の様々な断片を切り取っている。その断片をギャラリーの壁面に、自在に、撮影と同じ速度でインスタレーション構成して展示することで、撮影現場の臨場感を再現することに成功している。この撮影から展示までのアクティブな身体反応力が、労働と生活(生産と消費)が同一空間にあるこの畜産農家のめまぐるしい暮らし振りをライブ中継の如く表現することを可能にしたのであろう。そんな写真展示空間に身を置くとき、消費側にいる者として、無節操な消費に淫する己を発見した方も多かったのではなかろうか。確かに、誠に得難い写真的身体の持ち主である。今後、多彩に大きな進展が期待される才能である。 |
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<作者のプロフィール>
元木 みゆき(モトキ ミユキ)
1981年千葉市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学部デザイン学科視覚伝達専攻入学。05年同校デザイン学部写真コース(高梨豊ゼミ)卒業。07年東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻入学。03年第21回ひとつぼ展入選、05年第22回ひとつぼ展グランプリ受賞。
主な個展:03年第21回ひとつぼ展入選受賞展「mother farm」、05年第22回ひとつぼ展グランプリ受賞展「学籍番号011145」(いずれもガーディアン・ガーデン/東京・銀座)、「わ・る・つ」飯沢耕太郎企画展(表参道画廊/東京)、「光を嗅ぐ」Declinaison+GalleryIMAGO共同企画展(GalleryIMAGO/東京・千駄木)。
主なグループ展:03年「造形・D-style」(node gallery/神奈川・相模原)、04年「現場」(web collaboration)、「Continue Art Project 2004」(新潟・大島村)、「phos 7つの変調」(ニコンプラザ新宿マルチファンクションルーム)、05年「New Digital Age 2」(クラスノヤルスクミュージアム/ロシア)、「平和・進歩」(平遥国際写真フェスティバル/中国)、06年「aniGma-2006」(ノボシビリスクミュージアム/ロシア) |
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<Eun-Kyung, SHIN展内容>
結婚とは夫と妻の関係を作り出し、ひとつの家族を構成することになる社会的な体系である。
結婚式は神聖な儀式であるはずなのに、わが韓国では社交上の儀礼、それも味気ないものになりがちだ。結婚式場は至る所にあるものの、もとからあるこの国の建造物と調和するものはきわめて少ない。わが国の結婚式場は本物のヨーロッパ建築ではないし、内装も単なる真似や見せかけにすぎない。しかし、結婚しようとする人々は結婚式場を探しまわり、結婚式はそういう本物ではない空間で執り行われてきている。
結婚式場を通じてわが国の異国文化を表現してみた。 |
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<授賞理由>
韓国の結婚式場の内部空間をタイポロジーの手法で撮り進めた作品である。それらの多くは、ナショナル アイデンティティとはほど遠く、東西の“幸せ”らしき記号を剥離し、寄せ集めた無国籍な装飾に彩られている。そのような空間を大型カメラで精緻に、且つ色調をうまくコントロールした表現の完成度は見事である。そのあまりにも丁寧で、美しい、精緻な表現が一転し、事物のリアリティを喪失させ、仮想性を肥大し、作りモノの底の浅さ露呈させることに成功している。結婚式という人生の大事に虚構空間を借り、自らを欺瞞までして挙行している時代の流行に、作者は鋭い疑問を差し挟んでいる。こと、日本に於いても事情は同じようなことではある。さらにいえば、結婚は、かくも虚飾化しなければならないほど男女の不幸の入り口なのだ!? というアイロニーへと、大きくテーマ展開していく面白さもある。 |
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<作者のプロフィール>
Eun-Kyung, SHIN
1973年韓国生まれ。Chung-Ang大学美術修士号(写真学)。現在フリー写真家と教職を兼ねる。 |
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