新宿ニコンサロン

Ｊｕｉ展
[カフカラス]
7/17 (火)～7/30 (月)
10：00～19：00（最終日は16：00まで）
会期中無休

＜写真展内容＞
喫茶店の２階の窓際には誰もいなかった。本を読むのを一段落して、コーヒーをひとくち飲んだ。ほとんど車も人影もない静かな住宅街の一角。雨が止んで一瞬、すべてはピカッと光っているように見えた。赤信号が点滅しつつ派手な赤い自転車が急に視野に入ってきた。マスクとニット帽に覆われた大男が、携帯電話をかけながら巧みにハンドルを操って、段差をスムーズに乗り越え、歩道に上ってきた。荷台に大男よりはるかにデカイ白いふわふわ状のビニール袋がペダルのリズムに合わせて危うく揺れていた。「よーく落ちないなぁ」と袋が気になり、さっそくデジカメの電源を入れた。液晶画面から遠ざかって行った白い袋の下に女の細い足が現れた。
ん、ふつうだね……
わーおもしろい……
いやーこわい……
えっ、へんだわ……
不条理な連続の毎日毎日……。
何かを見て何かを感じ、そして予想を裏切る何かを期待して、シャッターを押す―確認―削除―選択―プリント―擬視―また撮る。
行き当たりばったりで拾ってきたなんの変哲もない日常の断片が、時おり謎めいた解釈不能なクロネコに変身していくのを眺めると、体中の細胞がダンスしているかのように興奮して収まりきれなくなってくる。
「言葉を超えるこの不思議な何かは、一体なんだろう」と思いきや、「ガァーガァー」一羽のカラスが突然現われ、「ナンデモナインダァ」と一言残して去って行った。
モノクロ94点。

＜作者のプロフィール＞
Ｊｕｉ（ジュイ）
1970年中国杭州市生まれ。95年来日。日本写真学園（林隆喜ゼミ修了）。東京綜合写真専門学校研究科卒業。