<写真展内容>
●相模原市総合写真祭「フォトシティさがみはら」について
写真は、芸術写真から家族写真まで広い地盤を持ち、その卓越した記録性と豊かな表現機能により、多くの人に感動を与えるものであるとともに、私たちの生活にとても身近な存在である。
相模原市では、豊かな精神文化が求められる新しい世紀の幕開けにあたり、写真文化にスポットをあて、これを「新たなさがみはら文化」として全国、世界に発信することを目指して、総合写真祭「フォトシティさがみはら」を2001年にスタートさせた。
この写真祭は、新たな時代を担うプロ写真家の顕彰と、写真を楽しむアマチュアに作品の発表の場を設けるとともに、市民が優れた芸術文化に触れたり、それぞれの場に参加できたりする市民参加型の事業で、写真をキーワードとして、時代と社会を考え語り合うことで、新世紀における精神文化の育成に貢献することを基本理念にしている。
なお、地域における写真文化の振興に顕著な貢献をしたとして社団法人日本写真協会が主催する2006年度の「日本写真協会賞・文化振興賞」に、相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会が選定された。
●受賞作品について
本写真展では、2006年10月に開催された第6回写真祭プロの部において、広義の記録性の分野で活躍している中堅写真家の中から「さがみはら写真賞」1名、新人写真家の中から「さがみはら写真新人奨励賞」2名、また、アジア地域で活躍している写真家を対象にした「さがみはら写真アジア賞」1名の入賞作品を展示する。
「さがみはら写真賞」には、桑原史成氏の「水俣の肖像―公式確認から半世紀の節目」が選ばれた。桑原氏は約40年余りにわたって水俣病事件を追い続けて取材し、作品はそれをまとめたもので、氏のその多年にわたる水俣病取材の功績が評価された。
「さがみはら写真新人奨励賞」に選ばれた石川直樹氏の「THE VOID」は、ニュージーランドの先住民マオリの聖地――古代航海術のためのカヌーをつくる巨木が生い茂り、いまなおマオリの人々の精神的な核として崇められている――森を精緻に撮影したものである。同じく同賞に選ばれた上本ひとし氏の「「峠越え」2003.8.23~2005.2.28空景」は、ガンを告知された母親の発病から死までの長い闘病生活に付き添いながら折々の“からっぽの風景(空景)”を感情を抑え、淡々と、精密に撮影したことが評価された。また、「さがみはら写真アジア賞」に選ばれたタイの写真家スラット・オスタヌグラフ氏の写真集「グッバイ・バンコク」は、東南アジアの一都市からアジアを代表する国際都市へと変貌する中でカオス状態となったバンコク、そこに暮らす人々の多様な生活、そして撮った先から次々と消え失せていく光景に郷愁と別離を封じ込めたことが評価された。 |