<写真展内容>
テーマは「せつなさと認識」である。
人はだれでも、昔の自分の写真を介して、自分自身の過去を認識することができる。ささいな記憶すら残存しないその昔、自分がその場所でその表情をしていた事実を、その写真から知ることができる。
またある時は、偶然購入した写真を介して、見知らぬ人々のひと時を認識することもできる。マウントの日付けを頼りに、こんな表情をした人々が、この頃、どこかこのような風景のなかにいた事実に思いを馳せる。
これらのスナップは実感のない記録だが、作者の屍体達は、作者が出会い、認識した現実である。人々に認識されにくくても、その屍体達は作者の足元で、作者と同じ時間の中に存在していた。
人々に忌み嫌われる屍体と、作者の過去、そして他人の過去との間には、気にも止めない限り知ることができないという共通点があるが、そういう意味で本展は「意識しなければとうてい認識不可能な存在たちの共演」なのである。
作者は本展のテーマを伝えるために、魚や動物達の屍体の写真と、パリのノミの市で入手したフランス人家庭の写真と、作者の幼い頃の家族写真を展示するが、フランス人家庭も、幼い作者も、すべての存在はせつなさを纏いながら死へと向かう。その象徴が屍体である。
作者は、写真の中から滲み出てくる「死」と「はかなさやせつなさ」を感じ取ってもらいたいと願う。カラー約30点・モノクロ約56点。 |