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2015年度 三木淳賞奨励賞
山本 雅紀「山本家」

受賞作品内容

本展は作者の家族を撮影した写真展である。
作者が小学校3年生のころ、一家は強制退去で家を追い出され、1カ月ほど車中生活を経験した。その後、子供は児童養護施設や乳児院へ預けられ、一家離散になった。2年と半年を経て再び家族一緒に暮らすことになったが、しばらくは貧しかったと作者は記憶している。家族一人ひとりでみても、いじめや引きこもり、病気や素行不良などそれぞれの過去があり、それが山本家の過去と絡み合って現在の生活や家族の関係がある。
そんな山本家は、人間臭くてありのままで、とても魅力的であり、作者の個性を目一杯満たしてくれる被写体である。ここが自分の出発点であり、帰ってくるところなんだと作者は認識することができた。
この作品を見て、共感する人もいれば拒否する人もいると作者は思う。何に共感しどう否定するのか。“自分にとって「家族」や「幸せ」とはどういうものか”、投げかけることができれば面白いと思っている。モノクロ45点。

選考理由

この作品は、作者の山本さんが自宅の中で自分の家族の日常を撮ったものである。
居間、台所、寝室、食卓に、父母妹弟が折り重なるように写されている。その様は演劇的演出がなされているかのようにも見え、常識的家庭生活の日常の記録とはとても思えない。また暴力的ともいえるフレーミングは、一見、非日常的なおそろしいばかりの真迫力を引き出しているが、よく見ていくとカメラに対して親和的であることがわかる。
この家族は、一体何ものか?常識では計れない高い親和的関係はどこからくるのだろうか?その過去や背景を求めたくなるが、ここでそれを明かすことはこの表現の目的ではない。
すべての家族たちの表情には、互いに隠すべきものはない。撮り手が家族であるとしても他人に通ずる可能性のあるカメラを気にするふうには見えない。まるで人の体内の内臓のように複雑に絡み合った構図は深い愛によって繋がれている証だ。小宇宙のように満たされている家族が映し出されている。現代、我々は<家族とは一体なにか>という命題から自由ではない。「山本家」は驚異の家族の驚異の愛の物語である。  (選評・土田ヒロミ)

プロフィール

山本 雅紀(ヤマモト マサキ)

1989年兵庫県生まれ。2012年日本写真映像専門学校卒業。13年から14年までニュージーランドに1年間滞在。14年から京都新聞社写真報道部に所属。

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