本来そのものがあるべき位置に収まっていないものを撮り集めた作品である。
そこにあったものが写真を通じて別のものに変容することで、
「自分がみている、またはみていた世界は如何様にも変わる可能性を孕んでいるのではないか」
という作者の疑念はより深まる。
本展は、作者がそれらを写真に撮るという行為を通じ、その感覚を自らの身体に刻み込むことで疑念を確信へ変えようと試みたものである。カラー約30点。
藤原氏の表現は実に奔放、大胆で、未完にも見える色彩やフレーミングは新人にふさわしい新鮮さに満ちている。
標準的な撮影技法を意識的に無視し、いやむしろ従来の写真表現を破壊したいという強い意志すら感じられる。その力強い意志と行動力に今後の大きな期待値を込めての評価となった。
スナップショットという手法は、カメラが切り撮ってくるイメージが肉眼の視覚認識を超えた異形として現われることがある。この作品「ホログラム」は、写されたものが日常と乖離するイメージとして現われたとき、日常の視覚認識それ自身を疑ってみようとする作業のようだ。このような体験は写真を始めて間のない初期に発見することが多くあるものだが、藤原氏はその偶発的に現われた原初的な体験を継続的に現われるようにするためにノーファインダー的な身体的行為を重視している。そこで生まれる写真が虚構のように感じられるのであろう。現実と虚像が浸透し合うレーザー光によるホログラム。それをタイトルとしていることからも、今見つめている事実らしきものから皮相を剥ぎ取り隠された異相を発見したいと願っているのであろう。異相の存在はさておき、このような果敢な挑戦の先が期待できる新人である。
1981年千葉県生まれ。
写真展に、2013年「ホログラム」(新宿ニコンサロンJuna21、大阪ニコンサロンJuna21)がある。