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2008年度 三木淳賞奨励賞
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内容:
作者は、大学3年生の秋ごろ、ほとんどの大学生がそうするように、自身も就職活動を始めた。
説明会に向かう黒い群れがお葬式に、照明写真が遺影に見えたことが、違和感の始まりであった。性格診断テストの練習、良い印象を残す質問の仕方、熱心さをアピールする説明の聞き方など、選考のために有利とされるさまざまなことは、自分の上手な偽り方を教わっているようで、恐ろしくてたまらなかった。それでもみんながきちんとできていることからはみ出してしまう方が、怖かった。
ということで作者は、松下初美をスーツにねじ込み、就活生・松下初美になることにした。その期間、作者は確かに自分であるのに、作者でないみたいであった。
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授賞理由:
受賞作品は、作者である松下初美氏自身の就職活動をテーマにしたものであり、写真展のタイトルもズバリ「松下初美」である。セルフポートレートのみならず、自身の成績表や就職活動のエントリーシートなども展示してしまうなど、その発想の自由さと明るさとが魅力である。
企業の説明会に向かうリクルートスーツの群れがお葬式に思え、証明用の写真が遺影に見えた違和感が始まりであったということだが、いま一歩踏み込んだ写真によるメッセージがあったなら、明るいユーモアを乗り越えて、発想の原点である社会への眼差しや批評性も加味されたのではないだろうか。 |
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作者略歴:
松下 初美(マツシタ ハツミ)
1985年神奈川県生まれ。2008年法政大学社会学部卒業。06~07年早稲田大学芸術学校専修科在籍。
写真展(個展)に、08年「松下初美」(新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロン)、「光、群れ」(シアタートラム)があり、グループ展に、07年「わたしたちと私」(PUNCTUM Photo + Graphix Tokyo/東京)、08年「work in Tokyo 浅草」(TEPCO浅草館)などがある。 |
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