|
|
|
2007年度 三木淳賞奨励賞
|
|
|
内容:
作者が長年撮り続けてきた北海道・牧場一家。ケミカルカメラから機動性の高いデジタルカメラに持ち代えた作者は、まるで呼吸をするようにシャッターを押し、牧場一家の日常を切り取っていく。
牧場一家が織り成す日常は、決して牧歌的な生活や営みだけで成り立っているわけでも自然の風景だけが満ち溢れているわけでもない。機械音がもたらす雑音もあれば、メディアの喧騒、都市的な風景、消費文化に侵された光景もある。むしろ、作者が切り取ってみせた牧場一家の日常は、自然・風土といった地理的空間と文化・社会的空間が重なり、絡み、擦れ合う、現代社会の軋みのようなものである。
考える前に、あるいは考えるスピードを超えて切り取られた光と知覚のざわめき。作者はさまざまな事物や人との出会いのなかで、自らの息遣いとともに、“生のざわめき”のようなシンフォニーを奏でてみせる。
|
|
授賞理由:
作者、元木が長年撮り続けてきた北海道の畜産農家のルポルタージュである。元木は、カメラを手にした座敷童の如く、牧場一家の中を神出鬼没に走り回り、日常の様々な断片を切り取っている。その断片をギャラリーの壁面に、自在に、撮影と同じ速度でインスタレーション構成して展示することで、撮影現場の臨場感を再現することに成功している。この撮影から展示までのアクティブな身体反応力が、労働と生活(生産と消費)が同一空間にあるこの畜産農家のめまぐるしい暮らし振りをライブ中継の如く表現することを可能にしたのであろう。そんな写真展示空間に身を置くとき、消費側にいる者として、無節操な消費に淫する己を発見した方も多かったのではなかろうか。確かに、誠に得難い写真的身体の持ち主である。今後、多彩に大きな進展が期待される才能である。 |
|
|
作者略歴:
元木 みゆき(モトキ ミユキ)
1981年千葉市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学部デザイン学科視覚伝達専攻入学。05年同校デザイン学部写真コース(高梨豊ゼミ)卒業。07年東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻入学。03年第21回ひとつぼ展入選、05年第22回ひとつぼ展グランプリ受賞。
主な個展:03年第21回ひとつぼ展入選受賞展「mother farm」、05年第22回ひとつぼ展グランプリ受賞展「学籍番号011145」(いずれもガーディアン・ガーデン/東京・銀座)、「わ・る・つ」飯沢耕太郎企画展(表参道画廊/東京)、「光を嗅ぐ」Declinaison+GalleryIMAGO共同企画展(GalleryIMAGO/東京・千駄木)。
主なグループ展:03年「造形・D-style」(node gallery/神奈川・相模原)、04年「現場」(web collaboration)、「Continue Art Project 2004」(新潟・大島村)、「phos 7つの変調」(ニコンプラザ新宿マルチファンクションルーム)、05年「New Digital Age 2」(クラスノヤルスクミュージアム/ロシア)、「平和・進歩」(平遥国際写真フェスティバル/中国)、06年「aniGma-2006」(ノボシビリスクミュージアム/ロシア) |
|