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第7回(2005年) 三木淳賞
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土屋 育子写真展 「IMAGES OF TRUST」
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内容:
イギリス最北東部の州ノーサンブランドは、北海に面したスコットランドとの国境の地。同州で作者は、21世紀初頭における医療の移り変わりと人々との関係を記録するため、カメラ片手に2年の歳月をかけて、約50ヶ所に点在する医療施設(病院や村の診療所など)を訪問してきた。撮影過程において作者は、医療を提供する側と受ける側の双方から話を聞き信頼を築くことで、彼らの肖像や医療現場での様子を傍観者ではない立場から捉えるよう試みてきた。
さらに作者は、病棟や病室といった看護・介護の現場に密着することで、‘人と人との触れ合い’に着目、医療と人々の関係性について写真を通じ再考察している。モノクロ約35点。
選考理由:
作者は東京工芸大学卒業後、渡英しさらなる写真の勉強を続けるうち、英国の女性写真家「ジョー・スペンス」の仕事に深く共鳴し、「フォトセラピー」について考えはじめる。そして、医療の現場を写真を通じて再考察するという目的のため、2001年から03年まで50箇所に及ぶノーサンブリア州の医療施設を訪問し撮影を行った。
いちカメラマンが医療の現場をルポルタージュするというスタイルでいえば、今なにがここで問題になっているのか、あるいは、現場の「状況」といったものを調査分析し、かつ克明に記録していくという方法論がとられることがしばしばだ。彼女もテキストで書いているように、そこでは「むき出しの人間ドラマ」が繰り返されているという事実もある。その結果として「迫真の映像」が描き出す世界は常に私たちにリアリスティックな現在というものを提供してくれる。しかし、彼女の「現場」はまず「トラスト=信頼」という撮影以前の態度表明、リレーションシップからはじまっている。そのせいか、ここに登場する多くの人々、患者も医師も電気係もクリーニングスタッフも等しく平穏な表情を見せている。しかし、現実的には深刻で様々な問題が向こう側に存在しているはずだということも写真はしっかり伝えている。そして、「写真に何ができるのだろうか」という彼女の素朴な反芻は、写真づくりのための写真ではなく、人間が生きていくために写真の力を信じていきたいというまなざしの在りようであり、私たちに大きな勇気を与えてくれる。
個にこだわり、個の連帯の中で「ワタシ」を見いだし、そこから「世界」へと歩みはじめたいという若い人たちの写真行為も正直な方法だ。しかし、ここにきて、「フォトセラピー」をはじめとして、写真で地域社会などにも直接的に関わっていきたいという積極的な意志を示す若い人たちが出てきたことは大きな収穫であろう。土屋育子氏の「IMAGES OF TRUST」を高く評価したい。 |
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作者略歴:
土屋 育子(ツチヤ イクコ)
1976年静岡県生まれ。98年東京工芸大学芸術学部映像学科卒業。2000年英国
ノッティンガムトレント大学芸術学部写真学科修士課程修了。01~03年英国
ノーサンブリア大学JO SPENCE奨学生。現在、同大学博士課程(写真専攻)在学中。02年、英国 ‘The Jack Jackson Award 2000’ ‘The Observer Hodge Photographic Awards’受賞。
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