時代の閉塞感の反映か、自分探しの手段か、内向的で既知の世界をなぞる若い写真家が多い中、この作品は未知の世界へ向かって開かれた瑞々しい視線で際立っていた。鮮やかな色彩と躍動感に満ち溢れているが、それはキューバでの生活の中で言語や習慣の違いを体験し、五感のすべてで対象へ挑んだ作者の身体的運動の結果である。私たちは作者を通して、厳しい経済環境下で不屈に生き延びてきた人々だけが持つ真の人間的な美しさに出会う。頭だけの異文化“理解”でなく、全身で文化のリズムを感じ取り表現を紡ぐ姿勢は、宗教を含めた文化理解が危急の課題となっている今日、より一層高く評価されよう。
1976年、岩手県生まれ。東京綜合写真専門学校(夜間部)中退。1999年11月から2000年9月までキューバに滞在。