セクシュアリティの通念を揺るがす作品である。レズビアンである作者が男性の身体を撮ることは、二重の意味で“他者”である身体に向かうことだ。作者は不安定で繊細なひとりの男の像を結ぶが、それは優しい眼差しに包まれている。レズビアンであることは、性的マイノリティとしての困難を被るだけではない。男女の二元論に凝り固まったホモフォビア(同性愛嫌悪)な社会において、永い間、「語られる側」つまり「語ることができない状況」を社会は彼らに強いてきた。この作品には、自らのセクシュアリティに正面から向かう作者だからこそできる表象の可能性をちりばめている。
新潟大学人文学部(中国近現代史専攻)卒業。日本写真芸術専門学校卒業。スタジオ勤務を経て、蔵田好之氏に師事、現在に至る。