「千年楽土」は紀伊半島の奥深くに営まれる、揺るぎない自然界に対する共感の記録である。作品は、紀伊半島の風土に向かって主旨をつくった。木々や花、光や風、山峡や里に対する大型(8×10)カメラの方法は、「身土不ニ―身体と風土は二つのものにあらず」という言葉で表される百々俊二の思想をよく体現し、古来より厚い信仰を生み出してきた紀伊半島山地の息吹、その見えがたい空間感をビジュアル化した。その一方で、「千年楽土」が都市化や情報化の波に洗われ、暮らしにも大きな困難をもたらし始めている今日的状況への危機感も呼び覚ます。同時代性も含みながら趣向を凝らさず、率直でしかも誠実に表現している。
1947年大阪府生まれ、日本写真協会年度賞。ビジュアルアーツ専門学校(旧・大阪写真専門学校)校長、日本写真芸術学会(PSJ)理事。
写真展=92年「衆生遊楽・バンコク」(銀座・大阪ニコンサロン)、95年「楽土紀伊半島」(銀座・大阪コニカサロン)ほか
写真集=94年「FACES OF HUMANITY 93/94」(共著)、95年「楽土紀伊半島」ほか