第20回（1995年） 伊奈信男賞
江口 弘美「植物 Part III」

植物学者でもある江口弘美が植物を生物学的に把握しているのは当然であろうが、江口作品には科学性のみならず自然界に対するおおらかな観照性も率直に表現されている。自然界の草木が示す豊かな表情と、バリエーション豊富な造形美、天然の色彩が持つ魅力など人文的な観察眼が巧みに交差したさわやかな植物のポートレートとして、まことに悦ばしい写真作品といえる。情報過剰の社会に生きる我々への清涼剤としても受け止める事ができる、オーソドックスでありながらひと味違った異色の植物写真作品である。