福岡在住で地元のテレビ局に務める榊晃弘は、九州で発掘された装飾古墳や幕末から開花期の様式建造物の撮影でいちじるしい成果をみせてきたが、伊奈信男賞の選考対象となった作品展『歴史の街並』は、それらすべてのアンソロジーともいえる作品群である。30年近くに渡って九州、沖縄地方の街並みを撮り続けて来た作者は各地に固有の風土を解読し、そこでくらす人々の文化の集積に敬意を払いつつ町並みの記録に努めてきた。その業績は写真の美しさのみに集約されることなく、これからの都市づくりにも示唆に富むものといえよう。
1935年福岡県生まれ。日本写真協会新人賞、日本写真協会年度賞受賞。
写真集=「装飾古墳」「眼鏡橋」