『光銀事件』という、まるで銀行強盗事件のような奇妙な題名を与えられたこの作品は、作者横須賀功光が“光のたわむれを銀の科学で形にする”ことにこだわる試みから生まれた作品である。裸体の女性をモデルに写真家は光のたわむれを銀粒子に転移させる。目に見えているものが目に見えない化学反応を介して、また別の次元の目に見えるものになる - それを作者は事件と呼ぶ。この幻想的なタイトルこそ、同作品のコンセプトの発端であり結論であろう。その間に、非現実的な写真映像が美しく浮かび上がっているのである。
1937年神奈川県生まれ。2003年没。日本大学芸術学部写真学科卒業と同時に、フリーの写真家としてスタート。83年より、イタリアンヴォーグ・ドイツヴォーグ・パリヴォーグのフリーランスのスタッフカメラマンとなる。日本写真批評家協会新人賞、講談社出版文化賞、ADC賞、カンヌ映画祭CM部門グランプリなど、多数受賞。
写真集=「射」「小夜子」「月」「京都の記録夏・冬」