ニューヨークのダウンタウンに近いバワリーストリートの一角にたむろする人びとを、定点観測のように撮ったのが郷津雅夫作品『バワリーストリート(昼⇔夜)』である。本来、写真というジャンルにとらわれることなく美術家として制作を続けるこの作者は、アパートの窓やバーのウィンドウに佇む様々な人間模様を読み取ることで、人間の生と死、自己と他者、現実と虚妄など実体に触れようとする。その手段が写真であり彼にとって写真はアートのための技法にすぎない。こうした意識が写真芸術の次元を拡張するのである。
1946年長野県生まれ。東洋美術学校卒。71年渡米、ブルックリンミュージアムスクール卒業後、東京・ニューヨークなどで個展多数開催。パリ写真月間特別審査員賞受賞。
写真集=「IN NEW YORK」(シリーズ3冊)「 "New York" 」