建築写真といえば、建築物が竣工したときの外観写真を思い浮かべるのが常だが、建築とは構造的な面から内部の装飾に至まで、さまざまな慧知と美意識の結晶であり、それゆえ建築写真も建築という人間の営みを多面的に記録する役割を担っている。増田彰久はまさにその役割を担う写真家だが、ニコンサロンでの写真展『アール・デコの館』は、建築文化を支える写真を語るうえで画期的ともいえる秀作である。同作品展は旧朝香宮邸(現東京都庭園美術館)の建築意匠のみごとさをあますところなく記録した秀逸な写真作品である。
1939年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。明治、大正時代の消えつつある日本近代建造物を一貫して記録追求する。日本写真協会年度賞受賞。
写真集=「明治の西洋館」「建築探偵東奔西走」「看板建築」「英国貴族の館」