第6回伊奈信男賞の伊藤明德の『伊藤明德原風景』は、作者の出身地である愛知県知多半島南部の漁師町を舞台に、作者独自のカメラワークと暗室処理のテクニックを駆使して表現されたユニークな心象風景作品で、写真展は全44点で構成された。タイトルが示すように主題は個的な心象風景とされているが、同作品は日本人の多くが共感しうるシュルレアリスム的な原風景を描き出していて、その視点の設定や高度な画像処理技術が共に高く評価され、1981年の受賞対象作品に選定された。
1948年愛知県生まれ。高校在学中から写真に興味を持ち、以来アマチュアカメラマンとして活躍。日本フォトコンテスト年度賞、ニッコール大賞。
写真集=「伊藤明德原風景」(ニコンサロンブックス・14)